ワクチン接種は飼い主の責任 なぜ、いつ、何を打てばいい?

  • :初めて犬連れの旅行に行くのですが、宿泊先の宿からワクチン接種の証明書を求められました。
    :山根 ワクチン接種とは、病原体を不活化(死滅)したワクチンまたは菌力を極端に弱めたワクチン(弱毒生ワクチン)を用いて、前もって免疫力をつける目的で実施するものです。ワクチン接種で予防できる病気には次のようなものがあります。①犬ジステンパー、②犬パルボウイルス感染症、③犬伝染性肝炎、④犬アデノウイルス感染症、⑤レプトスピラ症、⑥犬コロナウイルス感染症、⑦犬パラインフルエンザ症などです。特に①から⑤の病気は死に至る可能性が高い怖い病気です。必ずワクチン接種はしましょう。
  • :いくつか種類があると聞きました。どう違いますか?
    :山根 5種や9種の混合ワクチンのほかに前述の6種類のウイルスと5種類のレプトスピラ菌の感染を同時に予防する11種の混合ワクチンもあります。混合されているワクチンの種類によって料金も変わりますので、かかりつけの獣医師からよく説明を受けた上で、最も適当と思われるワクチンを選択しましょう。
  • :接種するタイミングはいつがいいのでしょうか?
    :山根 子犬は最初、母乳を通じて移行抗体を持ちます。この抗体が多く残っているうちにワクチンを接種しても意味がありません。一般に移行抗体は生後40日過ぎくらいから減り始めます。1回目をまず生後8週くらいに接種し、2回目をその1カ月後くらいに打ちましょう。万全を期すためにさらに1カ月後に3回目を打つこともあります。それから2、3週間たてば免疫ができます。それまでは、散歩などほかの犬と接触する可能性があることは控えたほうがいいでしょう。成犬は、基本的に年に1度の接種が推奨されています。
    なお、ペットショップなどで売られている子犬については、1回目はブリーダーのもとにいる段階で獣医師から接種してもらっておくべきです。接種せずに出荷されれば、パルボウイルスなどが蔓延する原因になります。
  • :接種の前後に気をつけることはありますか?
    :山根 ストレスがかかっている状態だと、抗体がつきにくいです。落ち着いた環境で過ごさせてから、接種しましょう。激しい運動やシャンプーをした日などは避けたほうがいいですね。また特に接種後2時間は、アレルギー反応やアナフィラキシーショックがまれに起こることがあります。重い場合はショック状態になることがあります。接種後は犬に異常がないか、よく様子を見守ることが必要です。

(朝日新聞 タブロイド「sippo」 No.25(2014年12月)掲載)

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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