遠くの「わが子」を支える 保護犬の養育費の支援制度

「ワンだふるファミリー」の募集パンフレット
「ワンだふるファミリー」の募集パンフレット

 犬の「殺処分ゼロ」をめざすピースワンコ・ジャパン事業には、「ワンだふるファミリー」という会員制度がある。里親として実際に保護犬を引き取る行為の代替的手段として、バーチャルな「家族」となって、お気に入りの保護犬を継続的な寄付で支えていただくものだ。月々3千円の寄付を1パウ(パウ=pawは肉球の意味)と呼び、10パウ集まれば保護犬1頭の養育費がほぼまかなえるようになる。

 ファミリー募集の対象になるのは、主に高齢や病気の犬たちだ。シェルターには飼育放棄犬から野犬まで、年齢も犬種もさまざまな犬たちが入ってくる。できればすべてのワンコたちに里親を見つけてあげたいが、老犬や、心臓病・皮膚病といった慢性疾患を抱えた犬は、なかなか引き取り手がなく、長く施設に残ることが多い。

 その子たちの存在がピースワンコにとって経済的な負担になってしまっては、彼らはシェルターの「お荷物」になり、肩身が狭い(私が犬ならそう思う)。そこで、残っても負担が大きくならないように、遠くから支えてくださる家族を募ることにしたのだ。

 ファミリーには、支援するワンコからの「手紙」が誕生月とクリスマスに届くほか、日常の様子を担当スタッフがブログで報告する。

 制度のスタートから半年余り。最近、ファミリー募集の対象とした20頭(亡くなった犬の後継犬1頭を含む)すべてが10パウを達成し、新しく5頭が対象犬に加わった。1人で何頭ものファミリーになってくださる方もいる。

 私が長くかかわっている国際支援の分野では、難民などの子どもを対象とした同様のスポンサー制度をいくつかのNGOが運営している。しかし、ピースウィンズ・ジャパンは、あえて設けなかった。「この子を支援してください」と呼びかけるのだが、現実にはその子だけに支援を届けるのではなく、村全体や学校全体を支援することになる。そこに違和感があったからだ。

 だがワンだふるファミリーの場合、支援対象の犬は人間社会からも犬の社会からも切り離されているため、寄付金をフード代や医療費など、対象犬の養育費にそのまま充てることができる。だから「この子のため」というメッセージに偽りがないと考えた。

 ファミリーのみなさんからもよく手紙が届く。中にはお菓子などを持って支援ワンコに会いに来てくださる方もいる。「わが子」へのファミリーの深い愛情は、お世話するスタッフにとっても大きな励みになっている。

ファミリー募集対象の犬たち。上段の一列が新たに追加された5頭
ファミリー募集対象の犬たち。上段の一列が新たに追加された5頭
大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この連載について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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