外猫を捕まえて持ち込み 保健所は受け付ける?

 外に猫がいる風景――。

 好きな人は好きでしょうが、嫌いな人もいます。

 猫の鳴き声が聞こえたり、自宅の敷地に糞尿をされたりすると、猫に対する怒りが湧く。さらには、その猫に餌をやっている人や不妊・去勢手術をして管理している人など、猫と関わりを持っている人に怒りの矛先を向けることもあるでしょう。

 こうしたケースはまだいいのですが、どこからか捕獲箱を入手して、こっそりと猫を捕獲し、保健所や動物愛護センターに持ち込むケースが各地であります。

 2013年9月に改正動物愛護法が施行されるまでは、自治体は、所有者や拾得者その他の者から、犬猫の引き取りを求められたとき、例外なく、引き取らなければならないと法律で定められていました。

 法的に引き取りを拒める明確な理由がないため、おそらくは多くの自治体で猫は引き取られ、新たな飼い主に譲渡されることなく殺処分されていたと思われます。猫の殺処分数のうち、捕獲猫はかなりの割合を占めていたと考えられています。

 それが法改正の結果、所有者からの引き取り要請について、ペット業者からの売れ残りの場合や、終生飼養の趣旨に反する一定の場合は、自治体は引き取りを拒めるようになりました。一方で、所有者ではなく、拾得者など「その他の者」からの持ち込みについては、依然として、自治体が例外なく引き取らなければならないかのような条文になっています。

 それでは改正前と変わっていないのでは???

 確かに、法律の条文は変わってはいません。しかし、改正法が成立する際、国会の「附帯決議」(法律そのものではないけれど、法律の施行に関し立法者である国会から政府に対する意見)によって、野良猫の捕獲・持ち込みは「動物愛護の観点から原則として認められない」ことが明記されました。同じ附帯決議の中で、地域猫対策について「官民挙げて一層の推進を図ること」とされており、地域住民に適正に管理されている地域猫が駆除目的で自治体に持ち込まれることは、地域猫対策の推進とはまったく相反するからです。

 さらに、2015年6月には、環境省から各自治体の動物行政部署に対し、捕獲猫が持ち込まれたときには、この附帯決議を尊重して取り扱うようにとの通知が出されました。

 以上のことから、原則として、外にいる猫を捕獲して持ち込むことはできず、仮に持ち込まれても自治体は引き取りをすべきではない――ということになります。

 実際の各自治体における運用について、女優の杉本彩さんが理事長をつとめる公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」が2015年6月以降に実施した全国の自治体アンケート結果(未回答11・6%)をみても、73・2%が「引き取りを拒否する」と回答し、「引き取る」と回答した自治体はわずか5・4%でした。

 もっとも実際の引き取り現場には、複雑な問題が存在することも、ときにあるでしょう。

 捕獲した猫を持ってきた人すべてに対し、行政職員が「附帯決議や動物愛護の趣旨から引き取れません」と言って突き返してしまうと、どんなことが予想されるでしょうか。みんながみんな、素直に元の場所に猫を戻してくれるでしょうか。行政職員としては、目の前にいる相手の言動に注意しつつ、猫の生命身体に対する危険があると判断したときは、やむを得ず、例外的に引き取りをせざるを得ないケースもあるかもしれません。

 いずれにせよ、動物愛護法の基本原則や、法律の趣旨からすれば、不必要に動物の命を奪うことを想定しているとは考えられません。仮に外猫による「迷惑」状態があるとしても、「猫除け」などの措置を講じ、あるいは、猫嫌いであっても地域猫対策を通じて外猫を管理することなどにより、猫が迷惑をかけている状態を軽減させていくことが相当といえます。

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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