藤田朋子&ブリトニー 犬を飼う覚悟と、ともに暮らす喜び

夫婦で悩んだ末に迎えたぶうちゃん。
皮膚アレルギーと付き合いながら、愛嬌ある行動に癒やされながら、ともに暮らす。
命を預かる「覚悟」とは。
文/太田匡彦 撮影/植田真紗美


 犬を飼うということは、命を預かること――。

 ブリトニー、通称「ぶうちゃん」(メス、8歳)を「家族」に迎えて8年。そんな覚悟を持って、藤田朋子さんは犬を飼ってきた。

「犬というのは、基本的に人間の都合でペットとして生まれてきた存在です。そして、モノじゃないけど、人間によって売買されている。命の売買自体ちょっとおかしなことなんですけど、でもだからこそ、いったん飼い始めたら最後までその命に対する責任を負わないといけない。それだけの覚悟がなければ、飼ってはいけないと思います」

 藤田さんも、夫でアコーディオン奏者の桑山哲也さんも、もともと犬好きだった。藤田さんの場合、実家で数年前までダックスフントを飼っていた。だから2005年に結婚したあと、夫婦ともに犬を飼いたい思いは強く持っていた。でも犬好きなだけに、犬を飼う大変さもよくわかっている。共働きで、お互い仕事が忙しいなか、躊躇も大きかった。飼おう、という提案を最初にしたのは桑山さんのほう。2人はそれから1週間以上もかけて決断をしたという。


犬種に特有の病気をカバーするのも人間

 藤田さんの覚悟は、ぶうちゃんがフレンチブルドッグという犬種であることで、より強まったところがある。人間によって「品種改良」を重ねられ、現在の愛嬌あふれる姿形になった結果、暑さに弱く、皮膚が敏感で、ヘルニアなどの疾患にかかりやすい犬種となった。藤田さんは言う。

「ほかの犬種も、人間の好みでいまの姿形になって、それぞれの犬種に特有の病気があるというのが現実です。そのぶんをカバーしてあげるのも当然、人間の責任です」

 実際、ぶうちゃんの場合、もう5年ほど皮膚アレルギーに悩まされている。2、3歳くらいだった夏のある日、耳のまわりが血だらけになるまでかいてしまい、それでアレルギーに気づいた。

 皮膚科に強い獣医師にかかり、アレルギーの原因を一つずつ取り除く生活が始まった。鶏肉がダメ、米がダメ、緑色の野菜がダメ……と食べられるものが減っていった。おもちゃで遊ぶのが大好きなのに、ビニール製のものをくわえるとすぐにかゆくなることもわかった。興奮もかゆみにつながるから、むやみに遊ぶこともできなくなった。

「かきたいのを我慢している様子を見るのがつらいんです。かこうとして、でも途中でやめる。留守番中はやむをえずエリザベスカラーをするのですが、素直にカラーをつけさせてくれる。本当にできた子です」

 動物病院が好きなのは、ぶうちゃんにとっても救いだ。動物病院には勇んで向かい、来院しているほかの犬たちと積極的に交流する。診療が終わっても、帰りたがらない。

「犬好きの人が集まっているから、居心地がいいんでしょうか。とにかく動物病院が大好きなんです。定期的に行っていて、結果的に最近になって、心臓からちょっと変な音がしていることもわかりました。健康管理にもつながっているので、ぶうちゃんの動物病院好きには助けられていますね」

 聞き分けがいいのが、ぶうちゃんの特徴だ。留守番を全くいやがらず、エリザベスカラーをすると自分からベッドに向かい、寝る体勢に入る。出かけるのを見送ってくれないから、藤田さんのほうがかえって寂しく感じるくらいだ。

「最近、少しおばあちゃんになってきたのかな?いつまでも元気でいてね」
「最近、少しおばあちゃんになってきたのかな?いつまでも元気でいてね」

見守ることによって自分にも多くの喜び

 お手や伏せはすぐに覚えた。無駄吠えも、子犬のころにしつけをしたら、ほとんどなくなった。

「番犬にならないんです」

 と藤田さんは、無駄吠えをしないぶうちゃんをちょっと誇らしげに紹介する。

 きれい好きなのも、ぶうちゃんのかわいらしいところ。留守番中、トイレシートに「大」をすると、「小」をしたくなっても近寄らない。そのために、本来してはいけない場所に「小」をしてしまうことがある。

「そんなときに帰宅すると、もう『反省のポーズ』で待っているんです。あおむけにゴロンとして、申し訳なさそうな顔をしてる。怒れないですよね(笑)。そういうときは、まずどこにしちゃったのか、探すところから始まります」

 ちなみに、藤田さんが一番好きなのは、ぶうちゃんの寝顔。もともと組んでいたバンドの名前が「Chien Dormant」と言い、フランス語で「眠る犬」という意味だった。いまプロデュースしているアクセサリーのブランド名も同じ名前。

「丸まって眠っているワンコを見ていると、本当に穏やかな気持ちになれますよね。Chien Dormantという言葉自体が好きなんです。ぶうちゃんの場合、そこにいびきが加わる。わたしどうやらいびきフェチみたいで、ぶうちゃんが寝ている様子はもう最高。たまらないんです」

 ぶうちゃんは心に癒やしを与えてくれるだけではない。最近では夫、桑山さんの健康維持にも一役買っている。桑山さんは、テレビ番組の企画で自分の不健康さをまざまざと思い知らされ、それをきっかけに禁煙をし、ダイエットに取り組み始めた。今年1月には、藤田さんと共著で『こんな僕でもやせました 始めたのはストレッチ&切り替えたのは気持ち』(NHK出版)を出版したほどだ。

 そのダイエットを影で支えたのがぶうちゃん。ぶうちゃんの散歩は、電柱と電柱の間をダッシュでつないでいくハードなもの。しかも夜の散歩などは、気候次第で1時間もかける。

「ぶうちゃんは見かけによらず、意外と走るんです。しかも短距離のダッシュを繰り返すので、人間はかなりバタバタと走らされる。『転ばないでね』と主人を心配してあげないといけないくらい(笑)。主人のダイエットに、ぶうちゃんは大活躍しています」

 ぶうちゃんを見守りながら、自分自身がたくさんの喜びを与えてもらっている。そんな関係が一日も長く続くことを、藤田さんは願っている。


(朝日新聞 タブロイド「sippo」No.26(2015年3月)掲載)


藤田朋子(ふじた・ともこ)

1965年東京都生まれ。87年、ミュージカル「レ・ミゼラブル」で舞台デビュー。88年、NHK連続テレビ小説「ノンちゃんの夢」で主演し、全国区の人気を得る。テレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」シリーズなどテレビ、映画に多数出演。ライブ活動も行っている

こんな僕でもやせました
始めたのはストレッチ&切り替えたのは気持ち

桑山哲也 藤田朋子 ストレッチ監修 横手貞一朗
(NHK出版) 好評発売中

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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