事故でペットに後遺症 慰謝料は請求できる?

(写真は本文とは関係ありません)
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 前回は、他人の故意過失によりペットが死亡したときの飼い主の慰謝料請求について説明しました。

 それでは、幸いにも一命を取り留めたものの、後遺症が残ったときは、法律や裁判例ではどう考えているでしょうか?

 交通事故などによって人間に後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料や逸失利益(労働能力を失ったことによる将来の収入減少分)の損害賠償請求が認められます。

 ペットの場合、これはどう考えるのでしょう。ペット自身が権利の主体となって加害者に損害賠償請求をすることはできませんが、ペットに重い後遺障害が残ったときは、飼い主が受けた精神的苦痛の慰謝料請求が裁判で認められています。

 例えば、

①2008年9月30日名古屋高裁判決は、交通事故により被害車両に乗っていた犬が後肢麻痺になり、自力で排尿排便ができず、日常的に圧迫排尿などの介護を要する状態になったケースについて、飼い主夫婦に各20万円、合計40万円の慰謝料を認めました。ちなみに、原審の名古屋地裁判決では夫婦で合計80万円の慰謝料を認めていました。

②2008年9月26日東京高裁判決は、免疫異常のダックスフントを受診した動物病院に対して、適正量のステロイド剤を投与する義務、高次医療機関に転院させる義務があったとして、これらに違反したことで犬の入院が長期化し、一時瀕死の状態になり、退院後の世話に多大な時間と手間を要するようになったケースについて、飼い主に20万円の慰謝料を認めています。

 慰謝料の額については、飼育年数や家族構成などからうかがわれる飼い主のペットに対する愛情の程度、後遺障害の内容・程度、飼い主による介護を要するか否か、飼い主の負担の程度、加害者の謝罪の有無――などを総合的に考慮して判断しており、個別のケースによって異なります。裁判例をみる限り、数万~数十万円の範囲にあるようです。

 いずれにせよ、ペットが死亡した場合に限らず、生きている場合でも、飼い主の慰謝料が認められることもあるのです。

 これは、ペットは自動車のように修理すれば直る、修理できなければ交換する、というものではないからです。このことからも、ペットは法律や裁判所でモノのように扱われていないことがわかるでしょう。

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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