人とペットの「共生」とは 札幌市条例に見る光明

イラストレーション/石川ともこ
イラストレーション/石川ともこ

 人と動物の共生する社会を実現しよう――。

 2013年9月に施行された改正動物愛護法の第1条(目的)に、「(この法律は)人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする」という文言が新たに加わったこともあってか、近年、よく聞くフレーズだ。

「共生」という関係性は小学校の理科で習うのが最初だったろうか。その後、教育課程のどこかで、共生と一口に言っても「相利共生(双方が利益を得る関係)」、「片利共生(片方だけが利益を得る関係)」、「寄生(片方だけが利益を得、もう片方には害になる関係)」などに分類されると教わったかと思う。

「人と動物の共生」という言葉を、犬や猫などのペットを念頭に使う場合、恐らく、多くの人は相利共生をイメージしているはずだ。そこまで深く考えずに、「共に生きること」とシンプルに受け止める人もいるだろう。

 だが一方で、人の側の利益を強調するあまり、ペットの側にいったいどんな利益があるのかよくわからない文脈で、この言葉が使われる向きも散見されるようになった。いわば片利共生、場合によっては寄生ともとれるような物言いが、一部で聞かれるのだ。

 その意味では、3月29日に札幌市議会で可決、成立した「札幌市動物愛護管理条例」が、すべての犬猫の飼い主に対して「生後8週間は親子を共に飼養してから譲渡するよう努めること」(第7条第1項第4号)と定めたのは、まさに人とペットとが相利共生する社会の実現を目指す、大きな一歩になるだろう。

 子犬や子猫の心身の健康を守るためには、生後8週間までは生まれた環境から引き離さないとすることが、努力義務とはいえ、条例に明文化された意義は大きい。そして、生後8週間まで生まれた環境で適切に社会化されることで、多くの飼い主が問題行動に悩まされるリスクから解放される可能性が高まる。結果として、人とペットが共に生きる際の選択肢が増えていくはずだ。

 ところで、3月10日に行われた札幌市議会予算特別委員会では、成田祐樹市議が、札幌市内のペット業界の取り組み状況について質問をしている。対して市側はこんな数字を明らかにした。

「市内の繁殖を営む事業者では、全204施設のうち129施設、約63%が既に『57日後に譲渡する』と犬猫等健康安全計画書の中に記載している実態がある」(石田宗博・生活衛生担当部長)

 札幌市では、実態として「8週齢(生後56日)規制」が浸透しつつあるというわけだ。冒頭に触れた改正動愛法では、8週齢規制に、いつ実現するかわからない「緩和措置」として付則がつけられたために、「56日」が「45日」(16年9月からは「49日」)と読み替えられてしまっている。札幌市の一歩がほかの自治体へと広がり、ひいては国における8週齢規制の確実な実施へとつながっていくことを期待したい。「人と動物の共生する社会」に近づいていくために。
(太田匡彦)



(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年4月発行)掲載)

太田匡彦
1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。15年、朝日新聞のペット面「ペットとともに」(朝刊に毎月掲載)およびペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わった。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。

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この連載について
いのちへの想像力 「家族」のことを考えよう
動物福祉や流通、法制度などペットに関する取材を続ける朝日新聞の太田匡彦記者が、ペットをめぐる問題を解説するコラムです。
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