人と動物の望ましいかかわりを学ぶ「ティアハイム」開設

建物の外観も真新しくなった
建物の外観も真新しくなった

 ピースワンコの第一号犬舎がある広島県神石高原町の仙養ケ原の一角に、保護犬のお世話を通じた体験学習や、譲渡希望者の見学を受け入れるための新しい施設ができた。古くからあった木造平屋の建物の床や天井を張り替え、壁も白とダークブラウンを基調にリニューアルした。さっそく企業研修などに使われ、ピースワンコのシンボル的な施設になりつつある。

 建物は仙養ケ原のなかでも見晴らしのよい高台にあり、改修前は地域の老人クラブの会合や、学生グループの研修などに使われていた。しかし、年を経て老朽化が進み、最近は利用頻度もかなり落ち込んでいた。

 仙養ケ原では、「命をいつくしむ」ことをテーマにした体験型の観光パーク「神石高原ティアガルテン」が1年前にオープン。隣り合うピースワンコの施設でも、保護犬とふれあえる体験プログラムを充実させ、殺処分問題の背景やその解決策についてより多くの人に考えてもらうことを目指している。そのための場として、一等地にある建物を借り受けて再生し、活用することにした。

 新しい施設の通称は「ティアハイム(動物の家)」。私たちが手本にしているドイツの動物保護施設と同じ呼び名である。中にはいつも保護犬たちがいて、手軽にふれあい体験ができる専用のフロアがある。隣には机、いす、ホワイトボードなどを備えたセミナールームもあり、20人ほどのグループが、殺処分問題の現状や犬のトレーニング方法などを学ぶことができる。

セミナールームを使った研修の一コマ
セミナールームを使った研修の一コマ

 先日は、昨年に続いて研修に訪れた東京の企業の社員約70人が4回に分かれてティアハイムを利用し、犬の散歩やトレーニング、犬舎の清掃などを体験した。セミナールームを使った振り返りのセッションでは、警戒心が強い犬を人にならすためのコツや、活動を支える資金調達の方法、さらには飼育スタッフのモチベーションについての質問も出て、議論が盛り上がった。

 担当スタッフにとっても、ティアハイムでたくさんの来訪者と接することがいい刺激になっているようだ。「自分たちの活動が社会的にどう見られているのか、どんな点で貢献できているのかを、実感できる機会が増えた」と、2年目の女性スタッフは言う。

 今後は企業研修だけでなく、子供向けのプログラムや教材を用意し、学校の体験学習としての利用も広く働きかける計画だ。ドイツのティアハイムがそうであるように、人と動物の望ましいかかわり方を、小さいころから実感をもって学べる場にしていきたい。

大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この連載について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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