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陣内孝則&スパンキー、レノン 先代とは不思議な縁で結ばれ 今は2匹が夫婦のかすがい

「初めての犬」に突然先立たれた。
そのことが埋めがたい喪失感をもたらすとともに、
ペットたちとの関係を考えるきっかけにもなった。
殺処分の問題など、動物を巡る問題がつきないだけに、
今飼っている2匹への責任を強く感じている。

文/太田匡彦 撮影/慎芝賢


スパンキー(左)/レノン(右)
スパンキー(左)/レノン(右)

 陣内孝則さんが自分の意思で飼おうと思った「初めての犬」がオスのイングリッシュ・コッカー・スパニエル、スパンキーだった。「犬公方」と呼ばれた徳川綱吉を描いたテレビ時代劇に、浅野内匠頭役で出演していたころに出会った。


「スパンキーとは不思議な縁で結ばれていたんです」


 陣内さんはそう振り返る。京都での撮影中に腹膜炎を起こし、入院することになった。2カ月間の入院と手術の末に退院すると、なぜか無性に犬を飼いたくなった。そうしてスパンキーを迎えることになるのだが、あとになって血統書を見ると、陣内さんの手術の日とスパンキーが生まれた日が全く同じだった。


 2012年9月、8歳になっていたスパンキーとの別れは、突然やってきた。陣内さんはその日、宮本亜門さん翻訳・演出のミュージカル「ウィズ~オズの魔法使い~」の初日を迎えていた。KAAT神奈川芸術劇場(横浜市)の舞台で演じ終えたあとのカーテンコール。いったん袖に引き上げると、共演している犬とふと目があった。


「妙に気になった。ずっと僕の顔を見てるんですよ。だから予定になかったのに、2度目のカーテンコールの時に抱っこして一緒に出たんです」


 そうして初日を無事に終えた後、妻・恵理子さんから電話がかかってきた。恵理子さんは号泣しながら、「スパンキーが死んだの。ごめんなさい」と告げた。その日の朝ご飯を食べないと思ったら、いきなり吐血し、その日のうちに亡くなってしまったという。急性肝硬変だった。


「別れがつらくて、もう犬を飼うのはやめようと思いました。でも、女房も息子もたいへんなペットロスになってしまって……。ペットロスを解消するにはもう1匹迎えるのがいいと聞いていたので、それじゃあと決断したんです」

 

 

微妙に違う性格 関係性知り愛情深く

 こうして、その年の暮れに陣内家の一員に加わったのが2代目スパンキー。先代と同じイングリッシュ・コッカー・スパニエルのオスでいま4歳。大阪のブリーダーのもとに陣内さん自身が足を運び、誕生し、適切に社会化されるまで半年ほど待って家に迎えた。


 続けて、2代目スパンキーが寂しくないようにと14年秋、同じブリーダーからレノンを迎えた。2代目スパンキーにとっておいにあたり、いま2歳だ。


「昔からイギリスには仕事でよく行っていて、そのときにこの犬種をよく見かけて印象に残っていたんです。ブリティッシュビートが大好きだったので、イギリス自体へのこだわりもあった。人なつっこい本当に愛らしい性格をしているんです」


 ただ、2匹のキャラクターは微妙に違う。スパンキーのほうが優しい「人格者」。レノンは「自分が自分が」と前に出てくる性格で、スパンキーはレノンに譲り気味だという。


 スパンキーがなでられていると、レノンが割り込んでくる。フードもまずスパンキーに先にあげるようにしているが、ここでもレノンが割り込んでくる。スパンキーはそんなレノンをいつも優しく見守っている。


 ただレノンにも、運動神経が悪いという弱点がある。ソファの乗り降りなどで機敏な動きを見せるのはスパンキーのほうだ。こうした犬同士の関係性がわかることで、より愛情が深まると陣内さんはいう。


「夫婦ともに本当に癒やされています。おかげで夫婦仲も良くなりました(笑)。子どもが2人とも独立し、会話もなくなりがちだった。でも2匹の話なら、夫婦で盛り上がれる。散歩の時にどうだったとかたわいもない話なんですけど、そういう会話が家族だんらんのひとときに潤いを与えてくれるんですよね」


 朝晩の散歩は基本的に恵理子さんの担当だが、時には陣内さんが連れ出すこともある。すると、自他共に認める方向音痴な陣内さんはたいてい道に迷う。だが犬たちが道を知っていて、陣内さんを導いてくれる。


 その道すがら、犬たちはカフェに入ろうとしたり、八百屋のおじさんから野菜の切れ端をもらったりする。だから、普段の妻と犬たちの行動が手に取るようにわかるのだという。


「こういうところもかわいいんですよね。最後には、犬たちが家まで連れて帰ってくれるんです。散歩の時は、犬たちの言うとおりにしていれば間違いない」

 

たまの散歩で知る 妻との普段の散歩ぶり
たまの散歩で知る 妻との普段の散歩ぶり

殺処分などの問題 僕らもしっかり声を

 そんな大切な存在だから、犬たちをドラマの撮影現場などに連れて行くこともある。主人公の獣医師役を演じたテレビドラマ「獣医さん、事件ですよ」(日本テレビ系)の時もそうだった。動物病院内のシーンで、医療用ケージのなかに入れる犬が足りないときにはスパンキーが「出演」したこともあったという。


「連れて行って問題がないところであれば、連れて行きます。人が大好きだし、出かけるのも大好きだから、犬たちのほうも喜ぶんです。ただ、ある2人の大物女優さんだけは、スパンキーは苦手でしたね。2人とも大の犬好きなんですけど、なぜかものすごく警戒していた。どうも、凜(りん)とした大人の女性が苦手みたいです(笑)」


 地方での仕事が続くと、長く会えない時がある。そんな時、たまらなく2匹に会いたくなる。街で出会う犬が、妙にかわいく見えたりもする。そして仕事を終えて帰宅すれば、2匹は全力で喜びながら陣内さんを迎えてくれる。


「僕に抱きついてペロペロしてくれるのはこの2匹だけ(笑)。本当に、とろけます。こんないとおしい存在なのに、世の中には犬や猫の殺処分なんていうものがあるんですよね。杉本彩ちゃんからペットにまつわる問題についてはたくさん聞いたことがあって、これは本当に大きな問題だと思っています。不幸な目にあっている犬や猫の話を聞くと、つらくて耳をふさいじゃう。でも僕らみたいな立場の人間も、しっかりこの問題について声をあげないといけないんですよね」


 犬の平均寿命は14・85歳(15年、ペットフード協会調べ)。年々延びているとはいっても、人間の一生に比べればあまりに短い。ましてや陣内さんは、先代スパンキーを若くして亡くしている。陣内さんは言う。


「飼い主の責任として、まずはこの2匹を幸せにしてあげないといけない。1年1年が貴重だから、一緒に過ごせる時間をとにかく大切にしたいです」



(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年10月発行)掲載)

 


陣内孝則(じんない・たかのり)
1958年福岡県生まれ。80年、「ザ・ロッカーズ」でバンドデビュー。82年映画「爆裂都市 BURSTCITY」で俳優デビュー。その後、TVドラマ「ライスカレー」「愛しあってるかい!」などで注目される。映画「ちょうちん」で87年報知映画賞・主演男優賞、87年ブルーリボン賞・主演男優賞を受賞。日本アカデミー賞・優秀主演男優賞を88年「ちょうちん」、89年「極道渡世の素敵な面々」「疵」で2年連続受賞する。以後テレビ、映画、舞台等で幅広く活躍。監督作品としては、「ロッカーズ」「スマイル~聖夜の奇跡~」がある。

 



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