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村田香織・sippo|更新|2016/12/13

第41回 大声を張り上げて鳴く猫 「問題行動」が起きたら、生活の質の改善を

窓辺で日光浴を楽しむ我が家のマオ(18歳)
窓辺で日光浴を楽しむ我が家のマオ(18歳)

猫の困った行動(夜鳴き)

 つきちゃんは18歳の日本猫(雌)です。飼い主さんは60代のご夫婦。1年ほど前から大声を張り上げて鳴くようになったそうです。近所の動物病院で安定剤をもらって与えると、一時は改善したのですが、今では全く効かなくなってしまったということでした。特に夜中に鳴くことが多く、飼い主さんは夜中に何度も起こされる毎日が続いていました。「長年かわいがってきた猫なのに最近はこのままいったいいつまで生き続けるのだろう?」思うようになってしまったとのこと。ゆっくり眠れない日が続き、昼間のんびり寝ているつきちゃんの姿を見ると腹立たしくさえ思えるのだそうです。

 年をとるとよく鳴くようになる猫はときどき見ますが、その原因はひとつではありません。高齢になるとさまざまな病気になりやすく、身体の不調で鳴いているケースも多いのです。甲状腺機能亢進症のようなホルモン疾患や腎不全などに関連した高血圧症、さまざまな原因による痛みなどでも、よく鳴くようになることもあります。やみくもに対処するのではなく、まずは獣医師による問診と血液検査や身体検査をしてもらうことをお勧めします。身体に異常がある場合には、まずは病気の治療や身体症状の緩和を行う必要があります。

 特別な体の異常がない場合には行動上の問題として対処していくことになりますが、行動上の問題もひとつではありません。分離不安症など不安が原因である場合や人の認知症に相当する高齢性認知機能不全、関心を求める行動などさまざまな原因があり、それぞれに異なる対処法が必要になります。動物の個体情報や日常生活の様子などを詳しく聞いて、原因を知ったうえで、対処法を飼い主さんと相談しながら決めて行くことになります。

 つきちゃんは身体検査、血液検査などによって身体上の大きな問題がないことを確認し、カウンセリングに進みました。カウンセリングによって、つきちゃんの仲が良かった同居猫が1年前に亡くなっていることや、その後、一戸建てからマンションに引っ越しをしたことなどがわかりました。動物にとって飼い主や同居動物の影響は大きく、特に仲が良かった人や動物がいなくなることは強いストレスとなります。また「犬は人につき、猫は家につく」と言われるように、猫にとって住み慣れた場所と全く異なる環境に引っ越すことも大きなストレスになるのです。

 これらのことを飼い主さんに理解していただいた上で、つきちゃんの生活の質をよくするための工夫を行いました。具体的にはこれまで猫のニーズでお話してきたことをひとつひとつ、つきちゃんの家庭環境の中で実行してもらいました。なかでもつきちゃんが気に行ってくれたのはベランダでの遊びでした。安全に配慮したうえでベランダに出すようにしたところ、ベランダで走り回るようになりました。また窓辺での日向ぼっこをしながら、まったりと飼い主さんにブラッシングをしてもらうことも楽しみになりました。昼間の食事は控えめにして夜はペットボトルに入れたフードを猫用ケージの中に入れて与えました。猫用ケージは飼い主さんの寝室から離れた部屋に設置し、夜は寝室には入れないようにしたことで、飼い主さんもやっと夜ぐっすりと眠れるようになりました。1か月後のお電話では、猫が変わったようにおだやかになり、自分もやっとゆっくり眠れるようになった、とのことでした。そして、「これでこれからも最後までこの子と仲良く暮らせそうです」とおっしゃっていただけました。

 ペットが問題行動を起こしたときに、その行動だけを止めようとするのではなく、まずはその子の生活の質を改善することを考えてみてください。体が健康で、ニーズの満たされた生活をしているペットが問題行動を起こすことは少なく、問題行動がペットの生活の質をよくすることで改善することも多いのです。

村田香織

村田香織(むらた・かおり)

もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。


イヌとネコの「こころの診療科」よりの記事


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