犬猫の死因1位はがん 想像以上に進行が速いことも

(写真は本文と関係ありません)
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Q:犬の死因の第1位はがんだと聞きました。
山根: 悪性腫瘍(しゅよう)のことをがんと呼びます。犬も猫も年をとるに従って発生する可能性が高まり、10歳を超えた犬の約半数ががんでなくなっているという報告もあります。近年、犬猫の寿命が延びており、そのためにがんになる犬猫も増えているというのが実情です。結果として、犬猫ともに、死因の1位ががんになっているようです。
Q:どのようながんが多いですか?
山根: できるがんの種類は、人間とほとんど変わりませんが、犬の傾向としてはまず、不妊・去勢手術をしていない場合に乳腺や前立腺などにがんができることが多いです。あとは皮膚、造血器系、リンパ系、消化器系などによく発生します。
 犬に多いがんで特に注意が必要なのは、肥満細胞腫です。生後6カ月くらいから発生するがんですが、これも加齢とともにできやすくなります。特に下半身にできるものはより悪性であり、転移しやすい傾向があります。検査などで繰り返し触ると悪化するという特徴もあり、なかなかやっかい。タイプによっては根治できない場合もあります。
 また猫では、腫瘍ができると、その悪性度がかなり高いケースが多いです。傾向としては造血器系やリンパ系で発生することが多いほか、猫白血病(FeLV)や猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)などウイルス感染によってがんになる可能性が高いのも特徴的です
Q:治療できますか?
山根: がんにもよりけりですが、最も大事なのは早期発見、早期治療です。犬や猫の1年は、人間にとっての4~5年に相当します。つまり、がんの進行が想像以上に速い可能性があるということです。飼い主さんが日ごろからペットの状態をよく観察し、皮膚にしこりができていたり、急激にやせたり、食欲が低下したり、貧血をおこしたりするようであれば、すぐに動物病院に行きましょう。
 そのうえで外科手術や抗がん剤の投与、放射線治療などさまざまな治療法が検討されます。ただ、治療法によってはかなり高額になることが予想されます。根治できないがんもあります。飼い主さんの家計の事情によっては、ベストではなくベターを選ばざるを得ないこともあるのですが、これはやむを得ないことだと思います。

(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年12月発行)掲載)


イヌ・ネコ ペットのためのQ&A

監修: 山根義久
編著: 公益財団法人動物臨床医学研究所
発行: パイ インターナショナル

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
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動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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