子猫時代から他の猫とすごす機会を! 社会化に大切

もち(左)&ねこず。猫のあいさつ
もち(左)&ねこず。猫のあいさつ

 猫はなわばりを作り、単独で狩りをする習性のある動物です。そのため群れで暮らす習性のある犬や人と比べると社交性はそれほど高くありません。

 しかし子猫の時期は親きょうだいととても仲良く暮らし、この時期に母親やきょうだいの行動を観察したり、ふれあう中で多くのことを学習します。親きょうだいとの関係を通じて、その動物種特有の社会的行動の基礎を築くのです。ですから猫が猫として成長するためには親きょうだいとのふれあいは不可欠で、早くに離してしまうと、他の猫とコミュニケーションできない猫に育ってしまいます。そのため生後間もなく捨てられた猫などを保護し、成猫になるまで1頭だけで育てたようなケースでは同じ屋根の下で他の猫と仲良く暮らすことは期待できません。

 ですから子猫の時期からできるだけ他の猫と過ごす機会を与えておくことをお勧めします。ただし、たとえ子猫であっても猫同士がすぐに仲良くなることはなく、最初は警戒して逃げたり、威嚇しあったりします。他の猫と会わせる場合にはケンカにならないように配慮が必要です。ケージ越しにお互いが見える場所で食べものを与えたり、おもちゃを動かすなどして誘ってみても良いでしょう。拒否反応が見られなければケージから出してみるなどして、少しずつ時間をかけて慣らしましょう。最初は警戒していても、子猫同士であればいずれ一緒に遊び始めるでしょう。

 猫が成長し、社会化期を過ぎてしまうと新たに出会った相手はなわばりへの侵入者として、遠ざけようとします。成猫がいる家庭に新たに猫を迎え入れるときにはいきなり引き合わせるのではなく、別室に置いて、匂いのついた敷物を交換するなどして互いの存在に慣らし、会わせる際にも最初はケージを利用したり、ドアの隙間越しに会わせるなどケンカにならない状況を作りながら、少しずつ慣らしていく必要があります。


猫の社会性には遺伝と環境の両方が関わっている

 幸い私たちの飼っている猫は、野生の猫種とは異なり、家畜化の過程で大人になっても子供の心を持ち続けるように変化してきました。これを幼形成熟(ネオテニー)といい、性的に完全に成熟した後も子供の性質が残る現象を指します。この程度には個体差があり、猫の社会性は生まれ持った気質すなわち遺伝的要因と発達期の生活環境などの環境要因の両方が関わっていると考えられています。

 そのため、大人になっても比較的他の猫を寛容に受け入れてくれる猫がいる一方で、全く受け付けない猫もいます。遺伝子は見かけではわからないうえ、私たちが変えることはできません。また子猫の時期に多くの猫と会わせることも現実的にはむずかしい場合が多いでしょう。したがって最も仲良くなってくれる可能性が高いのは子猫の時期から一緒に飼うということです。たとえば、きょうだい猫であれば1頭ずつ別々の家庭で引き取るよりも2頭ずつ飼うようにすれば、2頭が慣れないという心配はまずありません。猫と一緒に暮らすことでより猫らしい行動をする機会も増え、室内でも刺激不足になりにくいでしょう。また遊び相手や捕食行動の対象として飼い主を攻撃することも防ぐことができます。

 ただし、仲が良かったきょうだいが大人になってケンカをし始めるケースはたまにあります。特に雄同士は自然界でもテリトリーが重複することがないとされているため、大人になるとケンカをしやすい組み合わせです。刺激不足になると退屈やストレスからケンカが増えやすいため、早めに去勢手術をすると同時に、おもちゃを使って遊ぶ時間を持つなどエネルギー発散の機会を十分与えることが大切です。

 次回は関連したテーマとして猫のいる家庭に新たに猫を迎え入れる際の注意点について書きたいと思います。

村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「こいぬこねこの教育アドバイザー養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
ペットのこころクリニック
犬や猫の問題行動に詳しい獣医師の村田香織先生が、ペットと幸せに暮すためのしつけや飼い方のコツをていねいに解説します。
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