刺激のない環境で育った猫は、外出や環境変化で大きなストレス!

キャリーケースに慣らしておくことも大事。もみの木動物病院「こねこ塾」で
キャリーケースに慣らしておくことも大事。もみの木動物病院「こねこ塾」で

 子猫期は人や動物だけでなくまわりの環境やさまざまな刺激に対しても柔軟で、この時期に慣れ親しんだものには大人になっても過剰な反応を起こしにくくなります。もともと猫は環境の変化が苦手な動物です。できるだけストレスなく生活できるように、子猫期にいろいろなものに慣らしておいてあげましょう。

 犬はパピークラスやしつけ教室、ドッグカフェやドッグランなど飼い主と外出する機会を多く持つことができます。子犬期に多くの経験をつむことで社会性豊かな落ち着きのある成犬に成長します。ところが子犬期にいろいろな人や犬とふれあったり、外出する機会を持たずに育ててしまうと、社会化不足になり、知らない場所で緊張したり、他の人や犬を怖がるようになります。

 猫はもともと臆病で用心深い気質である上に、日常生活の中で犬のように外出する機会はほとんどありません。そのため多くの猫が経験不足のまま成長してしまうことになります。ところが猫の生涯のうちには動物病院への受診やペットホテルなど何らかの理由で外出しなければならないことは必ず起こります。また来客や引っ越し、飼い主の結婚や出産、新しいペットの飼育などいろいろな変化が起こります。このような変化は多くの猫にとってストレスになりますが、全く刺激のない環境で成長した猫にはさらに大きなストレスがかかることになります。過剰なストレスは食欲低下や免疫力の低下などを引き起こし、病気の治癒にも悪影響を及ぼします。したがって今後、子猫が人間と暮らす上で、出会うことになるような刺激には、幼い時期にわざわざ機会を作って慣らしておくことが猫のためになります。

「こねこ塾」に参加し、おもちゃで遊ぶ子猫
「こねこ塾」に参加し、おもちゃで遊ぶ子猫

「こねこ塾」は飼い主さんと子猫が一緒に参加していただく、子猫のための教育の場です。飼い主さんには「こねこ塾」に参加する前に、子猫が安心して移動できるように、キャリーケースに慣らしていただくことをお願いします。子猫たちは参加する際の移動中にも、慣れたキャリーケースの中でさまざまな音や匂い、知らない場所や景色などを経験することができます。また「こねこ塾」は動物病院の一室を使用していますので病院やスタッフにも慣らすことができます。塾の途中でキャリーケースに好物を入れて子猫の緊張度をチェックしてみます。キャリーケースの中でリラックスして好物を食べることができたら、ドアを開けてスタッフから食べ物を与えてみます。キャリーケースから無理やり出すことはせず、子猫が自分から周囲に興味を持って探索行動を開始するのを待ちます。多少緊張していても社会化期の子猫であれば比較的短時間で慣れて、おもちゃで誘うと遊び始めます。

 このようにして、知らない場所で楽しく過ごす経験をすることで子猫は多くのことを学ぶことになります。

 ただし子猫期に慣らしたものでも、その後全くそれらの刺激に暴露されなければ再び怖がるようになります。それでも子猫期に全く出会わなかった場合よりも慣らしやすいため、再び時間をかけて少しずつ慣らしてあげると良いでしょう。

村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「こいぬこねこの教育アドバイザー養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
ペットのこころクリニック
犬や猫の問題行動に詳しい獣医師の村田香織先生が、ペットと幸せに暮すためのしつけや飼い方のコツをていねいに解説します。
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