あなどれない歯の病気 子犬、子猫のうちに歯磨き習慣を

(写真は本文と関係ありません)
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  • :飼い犬の口臭が気になります。
    :口臭がするときは、まず口のなかをよく観察しましょう。歯茎が赤くなっていれば歯肉炎を起こしています。症状が進行してくると、歯肉(しにく)から出血している場合もあります。歯肉炎の段階で治療を始めてあげればもとの状態に戻りやすいので、早めに動物病院に行って下さい。なお犬や猫では、虫歯になるケースは少ないです。
  • :歯肉炎に気づけなかったらどうなりますか?
    :症状が進行して歯周炎を発症します。歯肉炎を放置すると歯肉溝の細菌が増殖してしまい、歯の周りに「歯周ポケット」という深い溝ができます。そこに歯垢(しこう)や歯石がたまって歯周炎が起きます。放っておけば歯槽膿漏(しそうのうろう)になって、歯が抜けてしまいます。

    歯肉炎の段階であれば歯ブラシで歯垢を取り除き、必要に応じて薬を与えます。でも歯周炎まで進んでしまうと、全身麻酔をかけたうえで歯垢や歯石を取り除く必要がでてきます。歯がぐらついている状況であれば、そのまま抜歯することもあります。
  • :歯の病気は怖いんですね。
    :歯が痛くなると、食欲がなくなることも多いです。そうなると、元気までなくなっていきます。また歯肉炎に気付かず放っておくと、血液中に細菌やその毒素が流れ出し、腎臓病や肝臓病の原因になることもあります。
  • :予防法はありますか?
    :人間と同じく、歯磨きをすることです。犬も猫も、歯垢がたまると3~5日で歯石になります。人間より速いペースで歯石ができるわけですから、できれば毎日歯磨きをしてあげてください。犬猫用の歯ブラシなどはペット用品店や動物病院で入手できます。

    ただ成犬、成猫になってから始めるのはなかなか難しい。子犬、子猫のうちから歯磨きに慣れさせることが大切です。成犬、成猫で歯磨きを嫌がるようであれば、無理にするのはやめましょう。歯磨きがどんどん嫌いになるだけですし、場合によっては攻撃性を引き出すことになります。

    歯磨きが好きになるよう、まず歯ブラシを見せながらおやつをあげる、次に歯に歯ブラシをあてておやつをあげる……など、焦らず慣らしていってあげてください。

(朝日新聞タブロイド「sippo」/2017年春号掲載)


イヌ・ネコ ペットのためのQ&A

監修: 山根義久
編著: 公益財団法人動物臨床医学研究所
発行: パイ インターナショナル

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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