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第53回 母猫になめてもらってうっとり…子猫の幸せな記憶を呼び覚ますブラッシング!

歯ブラシでやさしくブラッシングしてもらう谷ラミちゃん
歯ブラシでやさしくブラッシングしてもらう谷ラミちゃん

 生後まもなくの子猫は眼も耳道も閉じており、視覚も聴覚も未発達です。自力で排泄することすらできないため、母猫がお尻や陰部をなめる刺激によって排尿や排便をします。同時に母猫は、子猫の全身をやさしくなめてきれいにします(=グルーミング)。げっ歯類の研究で、母親から十分にグルーミングしてもらった子供は、成長後の不安傾向や攻撃性が低くなることが示され、幼少期のグルーミングの頻度は動物の性格形成に大きく影響することがわかっています。


 成長すると猫は自分で自分自身の体をなめてグルーミングしますが、仲良しの猫同士でもお互いの体をなめあいます。これを相互グルーミングといい、頭部など自分ではグルーミングできない部位を手入れするという効果もある、親和的な行動です。人がなでたり、ブラッシングしてあげることも、この相互グルーミングと同じような効果があり、猫は一般的にあごや顔など頭の部分をなでられることを好みます。


 特に長毛種の猫は、毛玉ができやすいので日頃からこまめなブラッシングが必要です。また短毛種であっても春から夏にかけて大量に毛が抜け、我々の衣類や家具にもたくさんの抜け毛がつきます。さらに猫が自分自身のグルーミングによってたくさんの毛を飲み込み、毛玉を吐いてしまうこともあるため、定期的にブラッシングすることをお勧めします。ブラッシングは皮膚の異常を見つけたり、ノミやダニなどの外部寄生虫の発見の機会ともなります。


 無理やり押さえつけてブラッシングしたり、毛玉を引っ張ったりすると、猫はブラッシングを嫌がるようになります。逃げたり怒ったりするようになると十分なブラッシングができなくなりますので、無理強いは禁物です。ブラッシングの時間を猫も飼い主も楽しめる穏やかな触れ合いの時間にするためにも、やさしく慣らしていくことをお勧めしあす。気持ち良くブラッシングをしてあげると猫は母猫になめてもらった時のような感覚で、ブラッシングが大好きになります。


 わたしの病院では、子猫と飼い主さんが一緒に学ぶ「こねこ塾」を定期的に開催していますが、こねこ塾では歯ブラシによるブラッシングをお勧めしています。これを私は歯ブラシブラッシングと呼んでいます。歯ブラシを自分の手の甲などに当ててもらうとわかると思いますが、歯ブラシの感触は猫の舌でなめられた時の感触にとてもよく似ています。歯ブラシの大きさもちょうど猫の舌に近い大きさであるため、通常のブラシよりも猫の顔や頭部を細かくブラッシングするのに向いています。また普通のブラシのように力を入れすぎてしまうことも少ないので、猫に不快感を与える心配がありません。歯ブラシでブラッシングすることで、猫と楽しく触れ合いながらブラッシングなどのケアに慣らす練習ができます。


 歯ブラシブラッシングのコツは、猫がスイッチオフの時に行うことです。スイッチオフとは、猫が眠っているかのんびり横になっているときで、触るとゴロゴロとのどを鳴らすような状態です。このタイミングにブラッシングを気持ちよく行うことでスムーズに受け入れてくれるようになります。猫が歯ブラシをかんだり、手でおもちゃにしてしまう時はスイッチオンと考えて、歯ブラシブラッシングは中止してください。中止せずに続けると猫は歯ブラシをおもちゃと考えるようになり、歯ブラシを見せるたびにかみつくようになります。


 スイッチオンの時にはブラッシングしたりなでたりせずに、おもちゃで楽しく遊んであげることです。しっかり遊んで疲れてスイッチオフになったら、やさしくなでたり歯ブラシブラッシングをしてあげましょう。スイッチオフの時に始めて、スイッチオンになる前(なってからではなく)にやめるのがコツです。この際、猫だけでなく飼い主自身もリラックスできるように静かな音楽を流すのも良いでしょう。満足げに眠ったり、グルーミングをしたり、ゴロゴロ喉を鳴らす姿は飼い主をとてもしあわせな気持ちにしてくれるでしょう。

 

村田香織

村田香織(むらた・かおり)

もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。


イヌとネコの「こころの診療科」よりの記事


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