TOP > 第58回 猫の「問題行動」、まず原因を探ることが大切、病気やストレスが原因のことも!

第58回 猫の「問題行動」、まず原因を探ることが大切、病気やストレスが原因のことも!

わが家の愛猫「ねこず」、9歳のオス猫です。
わが家の愛猫「ねこず」、9歳のオス猫です。

 私たち人間がペットとともに暮らす上で、人間側にとって不都合な行動を、「問題行動」と呼びます。猫の場合、この問題行動の多くは正常行動です。飼い主さんが問題視する行動の多くが生まれつきの行動特性で、猫にとってはごく当たり前の行動です。猫には人間とは異なる特有の行動様式があり、それがとても愛らしく思われる半面、人間にとって都合が悪い場合には問題行動と呼ばれるわけです。


 問題となる行動が猫の習性である場合には、この行動を一方的にやめさせることはできません。無理にやめさせようとすると猫がストレスを感じて情緒不安定になったり、別のはけ口を別に見つけて新たな問題行動を起こす可能性もあります。

 

 

◆猫の欲求を発散させてあげよう

 例えば、リビングのソファで爪を研ぐという問題を持つ猫がいたとします。やめさせようとして爪研ぎをしているソファを無くしてしまえば、別の家具で爪研ぎを始めるでしょう。また、爪研ぎをする度に厳しく叱ることを繰り返していると、恐怖や不安から人間不信におちいったり、場合によってはストレスからカーペットや布団などでオシッコをし始めるかもしれません。爪研ぎは猫の習性ですから、行動そのものをやめさせることはできないのです。したがって飼い主にとって不都合でない場所で爪を研ぐように、猫が気に入る専用の爪とぎを与えた上で、ソファには爪とぎに適さない素材のカバーをかけるなどすれば問題は解決します。つまり問題行動が猫の正常な行動である場合には、その欲求を飼い主にとって不都合でない形で発散させてあげる方法を考えることが大切です。


 一方、問題行動の中には猫自身のストレスや病気によっておこっている場合もあります。この場合にまず行わなければならないことはその原因を知ることです。原因を考えずにその行動だけをやめさせようとしても、やめさせることができないばかりか、かえって問題を悪化させてしまうこともあります。


 例えば、同居動物との関係が悪く、不安からトイレ以外の場所にオシッコをしているのに対して、猫を叱るとさらに不安が強くなり、問題は悪化するでしょう。またぼうこう炎などの病気が原因で、トイレ以外の場所にオシッコをしてしまっている場合には、もともとの原因であるぼうこう炎の治療をしてあげなければ問題を解決する事はできません。

 

 

◆猫を叱っても、ストレスでますます問題悪化

 私が猫の問題行動の治療に携わってきて感じることは、問題行動の多くが、猫が必要とする生活環境や日常生活での適切な刺激を与えられていないために起こっているということです。逆に言うと、猫にとって必要な生活環境や適切な刺激を与えることで、多くの問題行動は改善します。子猫の時から室内飼育に適応させておくことが大切ですが、室内飼育の最大の問題は猫にとって必要な刺激が不足してしまうことです。肉食動物である猫は、捕食性行動のはけ口を作っておいてあげることが重要であるという点を忘れないでください。


 もうひとつよく感じることは、多くのケースで飼い主さんの間違った対応が問題行動をかえって悪化させているという点です。最も多いのは猫の問題行動を叱って解決しようとして、猫にストレスがかかり、ますます問題を悪化させているという悪循環です。


 猫の習性をよく知り、猫の立場でその行動を理解しましょう。猫が必要とする生活環境や日常生活での刺激を飼い主にとって不都合でない形で整えてあげることによって、飼い主さんも猫もより快適に生活ができるはずです。


 さらに猫が人間社会で飼い主とともに快適に暮らすためには、子猫期からの教育が大切です。猫が日常の健康管理やケアを受け入れてくれるようにしておくこと、そして猫が飼い主を含む人間、そして同居動物と仲良く暮らすためには十分な社会化が必要であることを忘れないでください。(子猫教育についてはこの連載の「こねこ塾」の回を参考にしてください。)次回からはよくある猫の「困った行動」についてお話したいと思います。

村田香織

村田香織(むらた・かおり)

もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。


イヌとネコの「こころの診療科」よりの記事


専門の獣医師があなたの疑問にお答えします(健康医療相談)