猫問題の解決を早急に ALIVEが「全国動物行政アンケート」

 ALIVEでは、国内における動物の殺処分問題を構成する要因を分析したり、動物行政における全国的な傾向を把握して問題の本質に対応した政策提言をおこなったり、日々動物問題に取り組まれる方々の後方支援として「現場の声」を反映するために、毎年、「全国動物行政アンケート」を実施しています。

 

■「全国動物行政アンケート」とは?

 動物行政を所管する全国113の自治体(47都道府県・20政令指定都市・42中核市・4保健所設置市)を対象として、行政収容動物、実験動物、畜産動物、展示動物、学校飼育動物、動物取扱業者、動物愛護週間行事(動物ふれあいの実態)、災害対策をはじめ、動物行政の体制や業務実態など、多岐にわたる分野について業務上回答可能な範囲で設問したアンケートを実施し、いただいた回答をまとめたものです。


 データとして明確にすることで全国的な傾向を把握できたり、動物を取り巻く問題を客観的に捉えて根本的な対応策を考えたりすることができます。また、行政に対して様々な要請する際の根拠にもなります。


 この「全国動物行政アンケート」は1997年度より実施し、本年度で17年目を迎えました。大変ありがたいことに、全国の動物愛護管理行政職員の皆様から当会の調査趣旨にご理解ご協力頂いており、毎回、回答率は100%となっています。


 今回は13年度のアンケート結果をもとに、全国の行政収容施設(動物愛護センターや保健所など)にどれくらいの犬猫が収容され、どのような運命をたどっていくのかグラフを用いて解説させて頂きます。

 

■自治体における犬猫収容総数

 13年度に全国の自治体において収容された犬・猫の合計数は19万1237頭(犬:6万3578頭、猫:12万7659頭)で、前年度より約3万頭減少し、下げ止まりの傾向が見られた前年度と比べても大きな下げ幅となりました。


 収容総数のうち所有者がわからない犬・猫の割合が80・5%(犬:81.4%、猫:80.1%)と、非常に高くなっており、所有者不明の犬・猫を減らすための対策が急務です。特に猫の収容数のうち70・1%が子猫であり、野良猫の産んだ子猫や、不妊去勢手術を受けていない飼い猫が子どもを産み、飼いきれないから自治体へ持ち込むといったことを減らしていかなければなりません。

 

犬・猫の収容総数の推移(平成13~25年度)
犬・猫の収容総数の推移(平成13~25年度)

■所有者のわからない犬猫収容数

 13年度に自治体へと収容された犬・猫のなかで所有者がわからない犬・猫(所有者不明の引き取り数+捕獲数+負傷収容数)の数は、15万4262頭(犬:5万1736頭、猫:10万2526頭)でした。


 所有者のわからない犬は前年度に比べて5704頭少なくなり、毎年減少し続けています。また、昨年度横ばいになった猫についても前年度に比べ1万4985頭減少し、06年度以降で最大の下げ幅となりました。


 しかし、いまだ多くの所有者不明犬・猫が存在しています。特に所有者のわからない猫の収容数のうち73・5%が子猫であり、野良猫の産んだ子猫を重点的に対策する必要がありますが、野良猫対策のために不妊去勢手術の助成金制度を行っている自治体は全体の約35%、不妊去勢手術への助成金以外に野良猫対策として予算をつけている自治体は約30%しかありません。

 

所有者の分からない犬猫収容数の推移(平成18~25年度)
所有者の分からない犬猫収容数の推移(平成18~25年度)

■譲渡数と譲渡率

【譲渡数】

 13年度に譲渡された犬・猫の数は3万3932頭(犬:1万7042頭、猫:1万6890頭)でした。

 犬・猫合計の譲渡数は前年度より1147頭増えましたが、犬については前年度比で447頭減少となりました。しかし犬の収容数が毎年減っていることを加味すると、後述のように譲渡率は上昇しています。また猫は、犬の譲渡数とわずか152頭差まで肉薄しています。しかし、依然として猫の譲渡数がゼロの自治体も存在します。

犬・猫の譲渡数推移(平成18~25年度)
犬・猫の譲渡数推移(平成18~25年度)

【譲渡率】
 譲渡率は通常、譲渡数÷収容数で算出されますが、当会は昨年度のアンケートより自治体やボランティアの努力値をより正確に反映させるため、譲渡数÷(収容数-返還数)の計算式を採用しています。


 13年度の譲渡率は19・4%となりました。前年度の15・8%に比べて3・5ポイント高い結果となります。これは所有者のわからない犬・猫と同じく、06年以降で最大の下げ幅となっています。

 

■殺処分数と殺処分率

【殺処分数】

 殺処分数は殺処分数は13万5475頭(犬:2万9383頭、猫:10万6092頭)でした。
 前年度比で3万5133頭減となり、特に猫の下げ幅が多く約2万5000頭も減少しました。この結果は自治体の職員やボランティアの努力が如実に反映された結果であり、大変喜ばしいものです。年度によって下げ幅が上下しますが、毎年度着実に殺処分数は減っています。


 しかし、そのうち78・3%を猫が占めています。さらに、猫の殺処分のうち58%が子猫となっており、対応が急がれます。また都道府県別では例年通り、北陸地方は数が少なく、関西以西の地域で数が多いという結果です。

 

犬・猫の殺処分数推移(平成13~25年度)
犬・猫の殺処分数推移(平成13~25年度)
平成25年度 都道府県別犬・猫殺処分数(上位下位5位)
平成25年度 都道府県別犬・猫殺処分数(上位下位5位)

【殺処分率】

 13年度の殺処分率は、70・8%(犬:46・2%、猫:83・5%)であり、前年度に比べ5・2%(犬:6・6%減、猫:4%減)減少しました。近年では大きな下げ幅であり、犬については50%を下回りました。しかし、減ったとはいえ、いまだ猫の殺処分率は高い状況です。自治体に収容される数が犬の2倍と多く、返還率・譲渡率が約3~4分の1という、猫の抱える問題を早急に解決していく必要があります。

 

平成25年度 都道府県別犬・猫殺処分率(上位下位5位)
平成25年度 都道府県別犬・猫殺処分率(上位下位5位)

※データ等を使用する場合のお願い
当該記事の分析内容等のデータを、学校のリポートや様々な媒体等にご使用いただく場合は、以下の点にご注意くださいますようお願い申し上げます。
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2)文章を引用する場合は、部分引用であることが明らかなように「 」で区切る等して区別し、上記と同様に出典を明記してください。
3)犬猫収容・殺処分数の結果、各動物行政の体制・業務等の実態調査結果と考察など、動物問題の現状を知るための基礎となる資料集「全国動物行政アンケート結果報告書」のバックナンバーのご案内はこちらから

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この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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