次の旅行には犬も一緒に連れて行く! 愛犬と旅行をする「犬旅」

 旅行はしたいけど、犬をペットホテルに預けて行くのはかわいそう――。犬の飼い主なら、誰もが一度くらいは、そんなふうに悩んだことがあるはずです。それならいっそのこと、愛犬と一緒に旅行をしてみてはいかがでしょう。犬と旅行をすることは、「ペットツーリズム」や「犬旅」などと呼ばれ、近年、愛好者が増えています。(ライター 福田優美)


 

 1匹の犬が、健康で充実した一生をおくるためには、どのくらいの費用がかかるのか? シーンごとに犬の飼育にかかわる費用について解説するこのシリーズの第6回は、愛犬と一緒に旅行をする「ペットツーリズム」についてです。

 高速道路のサービスエリアなどにあるドッグランや、郊外のアウトドア施設では、犬を連れた人たちの姿をよく見かけるようになりました。お出かけ前に、どのような準備をすればいいのか。価格や気をつけるべきことなど、詳しく見てみましょう。

①ペットツーリズムとは?

 カフェやレストラン、ドッグランなど、犬と一緒に出掛けられる場所は増えています。室内飼育が基本の猫と違って、犬は様々な場所に連れて行くことができます。飼い主にとって、愛犬と一緒に出かけることは、ペットライフの楽しみのひとつでしょう。

 どこへ行くにも一緒がいい。そう思い始めたら、散歩やドライブだけでは飽き足らず、旅行まで一緒にしたいと考えるようになるかもしれません。

 少し古くなりますが、『犬旅元年 ペットツーリズムの実態と展望』(旅のマーケティングブックス)に、「旅の販促研究所」が2007年に、犬の飼い主2642人を対象に行ったインターネット調査の結果が掲載されています。

 それによると「犬と一緒に旅をする理由(目的)」の1位は「家に置いていくのがかわいそう」(52・8%)、2位は「家族だから当然」(47・5%)という回答でした。ただし、大型犬の飼い主に限った場合、1位は「ペットを思いっきり遊ばせたい」(57・7%)でした。もともと運動量が多いにもかかわらず、普段の行動が制限される大型犬の飼い主ほど、自然の中で思いっきり走らせてあげたい、という気持ちが大きいことがうかがえます。

 愛犬と一緒に旅行をするには、まず、犬が宿泊できるホテルを探さなくてはなりません。ペットツーリズム専門サイトでは、犬と泊まれる宿のほか、犬と一緒に参加できるツアーやアクティビティーを探すことができます。

 愛犬との旅行に役立つ情報サイト「pet宿.com」は、ペットツーリズムの先駆けとして1999年からペットと一緒に宿泊できる全国の宿を紹介しています。02年から行っている「ペット宿グランプリ」では、「接客対応」「ペットへの対応」「宿の設備」「料金」などの項目をもとに、利用者の投票から、年間で最も人気のあった宿を決定しています。「stay with dog」では、2100件以上の宿(※15年12月時点)の中から、ドッグランがある宿・ドッグスパがある宿など、ペットツーリズムならではのジャンル検索が可能です。また、「犬旅.com」は、犬が一緒だからといって妥協をするのではなく、質が高くこだわりのある旅や宿の紹介に特化しています。数は少ないですが、海外旅行も紹介しています。

 こうしたペットツーリズム専門サイト以外にも、JTBやHISなど大手旅行会社のサイトでは、ペットツーリズムに関するページを設けているので、使い慣れている人はそちらから探すのもいいでしょう。

 宿の価格は大体どこも、一人一泊〇〇円、一匹〇〇円、というふうに表示しています。犬の宿泊費は宿代に含まれていることもありますが、その場合でも、二匹目以降は一匹ごとの料金を求められることが多いようです。

 犬の宿泊費は、体格にかかわらず一律にしているところもあれば、体格により価格差を設定しているところもあります。宿によっては「小型犬のみ」「中型犬まで」などの体格制限を設けていることもありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

②宿のタイプ

 人間同士で旅行をするときと同じように、犬と一緒に泊まれる宿にも、いくつかのタイプがあります。

 前述のアンケートによると、ペットツーリズム経験者が最も多く利用しているのは「ホテル」(18・5%)、続いて「ペンション」(17%)、「キャンプ場」(16・5%)でした。この他にもコテージや旅館、コンドミニアムなどもあり、人間の宿の種類とほぼ同じと考えていいでしょう。

 ホテルの中には、飼い主と愛犬が同じ部屋に泊まることができる「同室タイプ」と、ペットホテルが併設している「別室タイプ」の二つがあり、旅の選択肢は人間だけの旅と比べても引けをとらないほどです。

 群馬県日光市にある「きぬ川国際ホテル」は、日本初のペット同室宿泊可ホテルとして、1986年から多くの飼い主とその愛犬を受け入れ、今では宿泊客のほとんどが愛犬家というペットツーリズムのパイオニア的存在です。同室に泊まれるのはもちろんのこと、犬用の食事を用意してもらい、同室で一緒に食事を楽しむことも可能です。

 高級ホテルチェーンにもペットツーリズムの波は広がっているようです。神奈川県箱根町の「ハイアットリージェンシー箱根 リゾート&スパ」では「ドッグフレンドリールーム」にチェックイン時に、愛犬に専門スタッフによるグルーミングを受けさせることができます。

「愛犬と楽しむ温泉旅館 伊豆修善寺 絆」(静岡県伊豆市)は、全室ペット宿泊可にとどまらず、愛犬と同じ布団・ベッドで眠れることが飼い主のあいだで好評を得ているようです。客室専属の仲居さんの多くは、愛玩動物飼養管理士やドッグトレーナーなどの動物関連資格保持者なので、旅慣れしていない犬を連れて行く不安も多少は和らぎそうです。

 東京ドーム42個分の広大な敷地内に複数のドッグラン、水遊び場、人工湖など、飼い主と犬が一緒に遊べる設備が多数そろう「レジーナの森」(福島県岩瀬郡)では、ホテル、ペンション、オートキャンプ三つのタイプの宿泊施設があります。宿泊する施設やプランによって様々な遊び方ができることも人気です。いずれの宿も、ただ犬と一緒に宿泊ができる、というだけでなく、人間が満足できるような宿として独自のサービスの提供を目指しているようです。

 宿はグレードや料金設定によって価格が異なるので、単純比較をすることは難しいですが、犬の宿泊費だけをとってみると、旅館が最も高く、コテージが最も安いという傾向が見て取れます。

 全てのタイプの宿に共通して言えることですが、人間の宿泊費用が高いからといって、その宿の犬の宿泊費も高いというわけではありません。むしろ人間の宿泊費が高い場合は、そこに犬の宿泊費も含まれているということもあります。一概に価格を比較することはできませんが、宿のタイプも価格帯も選択肢が多いので、下記の表を参考に犬との旅行を計画してみてはいかがでしょうか。

③ペットツーリズムのマナー

 出費にかかわる話ではありませんが、愛犬との旅行をより楽しいものにするために、知っておくべきマナーをいくつか紹介します。

 例外なくすべての宿で、狂犬病予防注射と混合ワクチンが接種済みであることが求められます。混合ワクチンは3種以上、5種以上と指定している宿もありますので、予約前に確認しましょう。

 また、ヒート中の雌犬は連れて行ってはいけません。ほかの宿泊犬を興奮させる恐れがあるので、ヒートが終わるまで時期をずらしたほうが無難です。

 トイレや無駄吠えなどの基本的なしつけは、済ませておいてください。受け入れる側としても粗相を想定して、匂いや汚れ対策をしていますが、トイレのしつけができていないとわかっていながら連れて行くのはマナー違反です。念のため、宿にチェックインする直前に、屋外でおしっこをさせるくらいの気遣いが大切です。

 出発前にはブラッシングやシャンプーを行い、できるだけきれいな状態にして連れて行きたいですね。

 そのほか「小型犬のみ可」「室内飼育犬のみ可」というところや、「闘犬種・攻撃的な性格の犬はお断り」という宿もあります。細かい規定や宿によって異なりますので、直接お問い合わせください。

まとめ

「犬を連れて旅行に出るなんて大変そう」と思う飼い主もいるかもしれません。しかし、実際多くのペットツーリズム愛好者は何度か旅をする中で、自分と愛犬に合った旅のスタイルを見つけているのです。

 留守中の犬が気になって旅行を楽しみきれない、そもそも留守にするのがかわいそうで旅行はあきらめている――という人は、ぜひ一度、犬を連れて旅行をしてみてください。

 犬は飼い主と一緒に出掛けることが大好きです。特に、普段運動不足の犬は、自然の中で遊ばせてあげるとストレス解消にもつながります。飼い主も、犬が犬らしくはしゃぐ姿を見て、一緒に来てよかったと思うでしょう。

 愛犬との密な時間を過ごすだけでも十分ですが、宿によっては、飼い主同士の交流イベントや、同犬種だけを同日に集めるといった趣向をこらした催しを準備していることもあります。自分たちに合った旅のスタイルを模索してみるのも楽しいかもしれません。

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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