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藤村かおり・sippo|更新|2018/01/30

成長しても肉球をちゅうちゅう 私の愛しき“指しゃぶり猫”


 昨年夏、我が家にやって来た子猫「はっぴー」の成長ぶりが目覚ましい。生後8か月を過ぎて体格がぐんと良くなり、すっかり少年だ。でもひとつ、子猫時代から変わらない癖がある。それは指(肉球)をしゃぶること。しかも、なぜか以前より頻度が増しているような気が……。

 

(末尾に写真特集があります)

 

   ◇    ◇


 自宅の居間で、「はっぴー」がマタタビ入りのおもちゃで遊んでいる。おもちゃを追って走る姿はしなやかで精悍。まるでヒョウやトラのようだ。


「たくましくなってきたな~」とながめていたら、パッと目が合った。すると、こっちへ向かってまっしぐら。ピョーンと私の膝に飛び乗って、いつもの“あれ”を始めた。


 ちゅう、ちゅう、ちゅぱ、ちゅぱ!


 私の腕の中で喉を鳴らしながら、前足の指をしゃぶり、まどろむような表情をしている。まるで赤ちゃん猫に戻ったみたいだ。


 正確にいうと、肉球の中央を吸っているのだけど、人間の子どもが指をしゃぶる姿に似ている。見ていると、こちらまで穏やかな、くすぐったい気分になってくる。


 でも、なぜ「はっぴー」は指を吸うんだろう。


 これまで飼った猫は、毛布や私の二の腕を、もんだり、踏んだり、吸ったりしていた。先住猫の「イヌオ」もそうだ。周囲の猫友だちに聞いても、“指吸い体験者”はあまりいなかった。


“モミモミ”や“フミフミ”は、赤ちゃん猫が母猫のお乳を飲む時の仕草だという。おとなになってからも、柔らかな感触に触れると、その頃の記憶が本能的によみがえるのだそうだ。


 昨年夏「はっぴー」を我が家に連れてきてくれた日本動物愛護協会のスタッフも「この子は自分の足の裏をくちゅくちゅすることがあります」と説明していた。トライアル2日目、私が抱っこをすると、さっそくその仕草をしてみせた。無心に指を吸う様子に、「かわいい!」と思わず見とれてしまった。

 

膝の上でまどろみの最中。赤ちゃんの時から吸うのは決まって「左」側
膝の上でまどろみの最中。赤ちゃんの時から吸うのは決まって「左」側

「はっぴー」は、古い魚屋の屋根裏で生まれ、天井が崩れて落ちてきた4兄妹(オス2匹、メス2匹)のうちの1匹。保護された時は4匹の中でいちばん体が小さかった。あまりに小さいので、スタッフは「他の母猫が生んだ可能性もある」と思ったという。


 私が保護猫譲渡会で「はっぴー」と出会ったのは、生後2カ月くらいの時。同じケージに入れられていた姉妹猫があまりに威勢よかったので、小さな弟猫は「姉妹にとられて、母猫のおっぱいにありつけなかったのかな」「おっぱい代わりに自分の肉球を吸っていたのかな」と想像したものだ。


 ところが、この指しゃぶりが、成長とともに減るどころか、むしろ最近増えてきた。気になって獣医さんに尋ねると、「吸入行動のようなものは、母親から早く離された場合に起こります。別の言い方をすると、飼い主に対して、うんと安らぎを感じているということでもありますよ」


 それを聞いて、思い当たることがあった。


 小さい頃の「はっぴー」は、夜中じゅう部屋を走り回って物を落としたり、いきなり寝ている先住猫に飛びかかったり、落ち着きがなかった。それが最近、少し落ち着いてきて、「お利口だね」とほめることが増えた。「はっぴー」は、そんな私に心を許して、前より甘えているのかもしれない。


 そういえば、1匹でいたり、私から離れたりしている時は、指しゃぶりをしない。抱っこと、指しゃぶりは、セットになっているのだ。私に抱かれると、自然と左の指が口に近づいていく……。


 人間の子どもなら、小学校に上がるまでに指しゃぶりを辞めさせないと……と親は思うだろう。


 でも、猫は人と違う。身体は少年、青年、おじさんと成長しても、ひたすら飼い主に甘えてよい存在だ。指しゃぶりをやめない「はっぴー」は永遠の赤ちゃん。この先もずっと見守り、愛し続けたい。


 あっ、また飛び乗ってきた!



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出典:sippo
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藤村かおり(ふじむら・かおり)

ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。


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