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監修:西川 文二・sippo|更新|2018/02/07

しぐさで犬の気持ちがわかる カーミング・シグナルって何?

何か訴えかけるような目
何か訴えかけるような目

「怖い」「好き」「遊んでほしい」…。そんな犬の気持ちを、飼い主の多くは、しぐさや様子から判断しています。しかし、その「判断」は、本当に合っているのでしょうか? もしかしたら、人間の都合で解釈し、わかってあげている気になっているだけかもしれません。ここでは、犬がストレスを感じたときなどに出すしぐさについてご紹介します。

 

 

カーミング・シグナルとは?

 犬は突然、弧を描くように歩いたり、体をかき始めたりすることがあります。また、元気に遊んでいたはずなのに、急に座り込んだり、伏せたりして飼い主を驚かせることもあります。


 このような行動は、すべて「カーミング・シグナル」と呼ばれるものです。カーミングとは、英語でCalming(落ちつかせる)という意味です。犬は、「ちょっと興奮しすぎちゃった」と感じたときや、相手に「少し落ち着いて!」と伝えたいときに、このような行動をとります。


 カーミング・シグナルは、生まれ付きのものもあれば、社会化期にほかの犬や人と関わりの中で身に付けていくものもあります。そのため、社会化がうまくできていない犬の場合、ほかの犬のカーミング・シグナルに対応できなかったり、適切なカーミング・シグナルを出せなかったりなど、コミュニケーションに失敗してしまうことがあります。


 愛犬にカーミング・シグナルの上手な使い方を教えるためにも、社会化期に多くの犬に会わせ、経験を積ませることが大切です。

 

舌を出すのは敵意のないしるし?
舌を出すのは敵意のないしるし?

カーミング・シグナルの種類


 カーミング・シグナルを提唱したのは、ノルウェーのトゥーリッド・ルーガス氏です。カーミング・シグナルのしぐさの数は、30弱あるいはそれ以上あると考えられています。以下に主要なものをご紹介します。

 

 

【カーミング・シグナル】【意味】
あくびをする ストレスを軽減しようとするなどの行為
おしっこをする 「私に注目しないで」などと訴えている
お尻を上げる 敵意がないことなどを伝える
おなかを見せる 敵意がないことなどを伝える
顔を背ける 「私に注目しないで」などと訴えている
体をかく 「もういい加減にして」などと訴えている
体を振る 「もういい加減にして」などと訴えている
弧を描いて近づく 敵意がないことなどを伝える
視線を外す 「私にストレスをかけないで」などと訴えている
舌をペロッと出す 敵意がないことなどを伝える
地面のにおい嗅ぎ 「私に注目しないで」などと訴えている
座る、伏せる 「興奮しないで」などと訴えている
背中を向ける 「私にストレスをかけないで」などと訴えている
伸びをする ストレスを軽減しようとするなどの行為
鼻を舐める 敵意がないことなどを伝える
興奮している2頭の犬のあいだに入る 興奮を鎮めるなどの行為
前足を片足だけ上げる ストレスを軽減しようとするなどの行為
瞬きが多くなる 「私に注目しないで」などと訴えている
目を細める 「私に注目しないで」などと訴えている
ゆっくり動く ストレスを軽減しようとするなどの行為

 

 

カーミング・シグナルを飼い主が知ることの重要性

 愛犬がカーミング・シグナルを出しているのに、飼い主がそれに気付けないと、どのようなことが起こるでしょうか。


 例えば、トレーニングをしているとき。犬が突然地面のにおいを嗅ぎ始めたり、あくびをしたり、目を反らしたりした場合、カーミング・シグナルを正しく理解している飼い主なら、「犬がストレスを感じているんだな」「難しいことを要求しすぎているかもしれない」ということに気付いて、適切な対処ができます。


 ところが、カーミング・シグナルを理解していない飼い主の場合、「気がそれている」「怠けている」「拾い食いをしようとしている」などと勘違いしてしまうかもしれません。


 カーミング・シグナルを知っておくことは、飼い主が犬と上手にコミュニケーションをとるためにとても大切なことなのです。

 

喜んで駆け寄ってくる犬
喜んで駆け寄ってくる犬

カーミング・シグナルの利用方法

 前述したように、カーミング・シグナルの一種に「伸び」がありますが、犬の伸びが常にカーミング・シグナルというわけではありません。寝起きなどにも、犬はカーミング・シグナルを出すときと同じように伸びをしますが、これは、カーミング・シグナルではありません。単純に体を伸ばしたいだけです。同様に、地面のにおいを嗅ぐ動作も、カーミング・シグナルであることもあれば、ただ単に、地面から気になるにおいがしているだけということもあります。


 犬が見せた仕草が、カーミング・シグナルなのか、それとも別の意図を持って行われたものなのかを知るためには、その前後の状況や、行動の頻度について確認することが大切です。通常の頻度よりも多く行うようであれば、やはり「何か理由があってしていること(カーミング・シグナル)」だと考えられます。また、環境の変化があったときや、知らない犬や人に会うなど、犬がストレスを感じるような状況で起こった場合も、カーミング・シグナルの可能性が高いでしょう。


 このように、カーミング・シグナルを正しく見極めるためには、日頃から犬の様子に注意しておく必要があるのです。


 カーミング・シグナルを知ると、犬の気持ちがわかるようになるだけでなく、人間の気持ちも伝えやすくなります。


 犬に対して、カーミング・シグナルと同じ動作を行うことで、「敵対心は持っていないよ」とアピールすることもできますし、反対に、知らず知らずのうちに敵意を示す行動をして誤解を招くこともなくなるでしょう。


 カーミング・シグナルを知って、正しく利用することができるようになれば、犬との暮らしはもっと楽しく、充実したものになるはずです。

 


「しぐさでわかるイヌ語大百科 ―カーミング・シグナルとボディ・ランゲージでイヌの本音が丸わかり!」

 

著者:西川文二

発行:SBクリエイティブ(サイエンス・アイ新書)

価格:952円+税

オールカラー、224ページ

監修:西川 文二

監修:西川 文二(にしかわ・ぶんじ)

日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。家庭犬のためのしつけ方教室「Can! Do! Pet Dog School」代表。 環境省の「動物適正飼養講習会」講師など歴任(平成20〜22年度、27、28年度)。「犬のモンダイ行動を直す本」(PHP出版)、「イヌのホンネ」(小学館)、「改訂版 犬は知的にしつける」(ジュリアン)など著書多数。

 

Can! Do! Pet Dog School ホームページ


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