犬なのに犬嫌い!? ほかのわんちゃんとの付き合い方

どの犬も他の犬が好きとは限らない
どの犬も他の犬が好きとは限らない

 犬同士が仲良くじゃれ合っていたり、ぴったりくっついて眠っていたり…。そんな姿はとてもかわいいものです。ところが、実際に犬を飼ってみると、「散歩中にほかの犬とすれ違うたびに吠えてしまう」「ほかの犬がいると怖がって逃げようとする」ということも珍しくありません。いったい、どうして犬嫌いになってしまうのでしょうか。原因と対処法についてご紹介します。

犬なのに犬が嫌いなこともある?

 飼い主が「この子は犬嫌いなのだな」と判断するポイントは、多くの場合、散歩中やドッグランなどでのほかの犬への接し方となるでしょう。しかし、この場合の犬たちは、みんな「知らない同士」です。

 もし、ずっと家の中で過ごしていた人が、ある日突然、知らない人だらけの中に放り込まれたら、萎縮してしまうのではないでしょうか。積極的に声をかけて友人を増やせる人もいるかもしれませんが、何もできない人も多いと思います。その上、そんな「知らない人」に突然肩を組まれたら、逃げてしまう人もいるでしょう。

 犬が知らない犬と出会ったときに固まってしまったり、相手が近づいてきてくれても挨拶できなかったりというのは、このようなことと同じ状況です。

 そこで、大切になるのが、柔軟性の高い子犬のうちから、たくさんの犬に会わせて、「世の中にはいろいろな犬がいるんだ」と教えることです。そして、正しい挨拶の仕方を覚えさせることです。

別の犬と過ごす時間が大事
別の犬と過ごす時間が大事

犬とのふれ合い方の覚え方

 生まれたばかりの子犬は、母犬や兄弟犬と過ごす時間の中で、自分以外の犬との接し方を覚えていきます。こうした経験が、犬の社会化の基礎となります。

 しかし、それだけで十分な社会化ができるわけではありません。多くの犬に対応できる社会性を身に付けるためには、子犬の時期になるべくいろいろな犬と楽しくふれ合う経験をする機会を与える必要があります。

 子犬ばかりが集まるパピークラスや犬の幼稚園などに連れていくと、多くの犬と接する機会が持てます。犬とふれ合うことで、子犬は犬同士の挨拶の仕方や、遊びの誘い方などを学んでいきます。犬同士は、人間から見るとギョッとしてしまうような、激しい取っ組み合いをすることがあります。牙をむいて床を転げ回ったり、相手の犬を押し倒したりすることもあります。

 しかし、これが生後4ヵ月くらいまでの乳歯の犬同士であれば、相手に大きなケガを負わせることはありません。こうした取っ組み合いを通じて、子犬は噛み加減や、ほかの犬との接し方を覚えていくのです。

 ただし、怖がりの犬が押しの強い犬に追いかけまわされるような経験をすると犬が怖くなってしまうことがあります。またサイズが極端に違う犬と遊ぶと、犬に悪気はなくとも、けがをしてしまうこともあります。経験豊富なインストラクターがいるパピークラスや犬の幼稚園(保育園)では、犬同士の相性やサイズ、気質などを見ながら会わせていくので安心です。

 一方、ドッグランなど専門家がいない場所で遊ばせるときには注意が必要です。

 こういう所に来ている犬が、必ずしも犬と適切なふれ合いができるとは限りませんし、犬同士の相性が合うかどうかもわかりません。犬が怖がったり、危険な状況に陥ったりしないよう、いきなりリードを外すのはやめましょう。周りの犬や自分の犬の様子をよく観察し、楽しい経験になるように配慮しましょう。

 楽しい経験を積んで犬好きになった子犬は、散歩中もほかの犬と遊んだり、挨拶をしようとしたりするかもしれません。こういうときは、まず飼い主が相手の飼い主に、「犬を近づけても良いでしょうか」と聞いてみてください。

 相手の犬が犬嫌いだった場合、怖がらせてしまう可能性もあるからです。また、犬同士の様子をよく観察して、相手の犬や飼い主が嫌がるそぶりを見せたら、しつこくさせないように気を付けましょう。

小さなうちに他の犬との付き合い方を覚えたい
小さなうちに他の犬との付き合い方を覚えたい

犬が苦手になってしまったら?

 できるだけ犬と接する機会を持たせたつもりでも、どうしても、ほかの犬と接するのが苦手な犬もいます。犬には個性がありますから、いくら飼い主ががんばっても、思ったとおりの性格にできるわけではありません。また、子犬のときに、ほかの犬に咬まれたり吠えられたりしたことで、犬嫌いになってしまうこともあります。

 このような状況になってしまったときに、犬好きにさせようとして、たくさんの犬がいるところに入れたりすると、余計に犬嫌いがひどくなってしまうことがあります。また、1対1であっても、怖がったり嫌がったりしているのに、無理に相手の犬に近づけるのは良くありません。無理をすると、恐怖から相手の犬を強く咬んでしまうというような事故につながる恐れもあります。

 他の犬を怖がる場合は、散歩中に犬に会ったときは、おやつをあげて気をそらしたり、吠えずにすれ違えたら、すかさずほめてあげたりするなど、ほかの犬と会っても嫌なことは起こらないことを教えてあげましょう。

「それでも犬と関われるようにしたい」という場合は、専門家のいる犬の幼稚園やドッグトレーナーなどに相談して、プロの手を借りるようにしてください。

 犬の社会化はなるべく若いうちに行うのが鉄則ですから、早い時期に相談することが、解決への糸口になるはずです。

「こころのワクチン ――子犬に教える人としあわせに暮らす方法」

著者:村田香織
出版社:パレードブックス
定価:1,543円 (税込)
体裁:四六判・294頁(ソフトカバー)

監修:村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
子犬の飼い方・しつけ方
犬のしつけで大切なのは、子犬の時期。飼い方やしつけのポイントを、動物行動学に詳しい獣医師に解説してもらいます。
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