イヌ・ネコの症状辞典

皮膚、粘膜が黄色い

 肝臓の主な働きの一つに胆汁の分泌があります。胆汁色素とは、胆汁に含まれる色素(主にビリルビン)のことで、肝臓、脾臓ひぞう、骨髄で血液中のヘモグロビンからつくられ、胆汁中に排泄はいせつされます。

 体に何らかの異常が起こり、体内を循環しているビリルビンが排泄できなくなると、血液中に増加します。その結果、皮膚や粘膜などが黄色くなります。この症状を黄疸おうだんといいます。

 体内のビリルビンが増加すると必ず黄疸が現れるわけではありません。検査などでビリルビン値が増加(高ビリルビン血症)していても、肝・胆管系や造血器系の病気では、黄疸が現れないことがあります。

原因
 
 黄疸の原因は、大きく溶血性黄疸、肝性黄疸、肝後性黄疸の三つに分けられます。
 また、伝染性の病気(レプトスピラ症)や血液寄生原虫によって起こる病気(バベシア症)、猫伝染性腹膜炎などでも黄疸が現れ、前述の範疇はんちゅうに含まれます。
 そのほかに、敗血症、膀胱破裂ぼうこうはれつ、炎症性腸疾患、膵臓癌すいぞうがんでも二次性に肝疾患を起こし、なかには黄疸をみることがあります。
●溶血性黄疸
 ビリルビンの増加がみられますが、黄疸は軽度で貧血を伴います。
 代表的な病気に免疫介在性溶血性貧血があります。また、溶血性貧血の原因となる物質の摂取や細菌、ウイルス、リケッチア、寄生虫の感染、先天性異常によっても溶血性貧血が起こります。

●肝性黄疸
 肝細胞の壊死えしや機能不全、肝内胆汁のうっ滞によって起こります。黄疸の程度は中等度です。代表的な病気は、イヌでは慢性活動性肝炎、肝内胆汁うっ滞、急性肝壊死、肝硬変、ネコでは脂肪肝、胆管肝炎、肝臓のリンパしゅ、猫伝染性腹膜炎などがあります。

●肝後性黄疸
 肝外胆管のうっ滞が原因となって、重度な黄疸が出現します。主な病気は、胆管閉塞症たんかんへいそくしょう、胆石症、胆泥症などがあります。
観察のポイント
 
 黄疸の程度は様々です。
 溶血性貧血では黄疸が比較的軽いために発見が難しく、動物は貧血のためあまり動きたがらず、じっとしていることが多くなります。
 肝性黄疸、肝後性黄疸では、黄疸は強く現れますので、肉眼でもはっきり確認できます。いずれも緊急を要する病気のため、早急に獣医師の診察を受ける必要があります。
●黄疸の確認部位
 目の白目の部分や歯ぐきなどが黄色っぽくなっていないかを確認するとよいでしょう。
 黄疸が重度になると耳介じかい部(耳の内側)や下腹部でもみられます。

●尿の色
 尿は濃い黄色となります。
 なお、黄疸が軽い場合は、肉眼では確認できないことがあるので注意してください。

●ほかの症状を伴う
 黄疸が疑われる場合は、元気や食欲がなくなるなど、ほかの症状を伴います。たとえば、溶血性貧血では、黄疸と貧血がみられます。ところが、肝性黄疸や肝後性黄疸では、これといった特徴的な症状はありません。しかし、何らかの全身症状が現れますので、注意深く観察してください。
考えられる主な病気
 
免疫介在性溶血性貧血[主にイヌ]
ハインツ小体性貧血[イヌ、ネコ]
ヘモバルトネラ症[主にネコ]
猫白血病ウイルス感染症(猫レトロウイルス感染症)[ネコ]
猫伝染性腹膜炎[ネコ]
トキソプラズマ症[イヌ、ネコ]
レプトスピラ症[イヌ、ネコ]
バベシア症[イヌ、ネコ]
慢性肝臓病(慢性肝炎、肝硬変、肝線維症)[イヌ、ネコ]
急性肝不全[イヌ、ネコ]
脂肪肝[主にネコ]
門脈体循環短絡症[主にイヌ]
肝外胆管閉塞症(総胆管閉塞症)[イヌ、ネコ]
胆石症、胆泥症[イヌ、ネコ]
肝臓の腫瘍[イヌ、ネコ]
胆嚢・胆道の腫瘍[イヌ、ネコ]
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