犬役の声優、「ウォン」だけで感情を表現 小説「声のお仕事」

「声のお仕事」を書いた川端裕人さん =山家誠一氏提供
「声のお仕事」を書いた川端裕人さん =山家誠一氏提供

 ドラマやアニメ、ナレーションなどで活躍している声優の仕事と暮らしを描いた小説「声のお仕事」が文芸春秋より先ごろ出版された。書いたのは作家の川端裕人さん。自身の作品がアニメ化されたのが、この仕事に興味を持ったきっかけだった。

 

 主人公の結城は20代後半。「声で世界を変える」と意気込んでオーディションを受け続けているが、なかなか機会がない。生活は喫茶店のアルバイトで支えている。

 

 そんな彼に初めてレギュラー番組の仕事が来るが、女の子に飼われている犬の役だった。この犬役が難しい。場合によってはセリフでやり取りするより大変だ。「ウォン」という鳴き声だけで飼い主との間に生まれる感情を表現しなければならないからだ。

 

 川端さんは言う。「多分、僕らは声で世界をちょっとずつ変えているんです。不機嫌な声を出せば周りが暗くなるじゃないですか。声が持つ可能性によって世界を日々創り出している人たちの話です」

 

 番組が終わり、結城には再び展望がなくなった。中学のクラス会に行くと、友人たちは皆立派な社会人になっていた。崖っぷちだ。崖っぷちでも続ける。多分、離れられないから離れないのだ。不安は未来が開いている希望の証しでもある。ドラマやアニメの向こう側にある青春が伝わってくる。

 

(ライター・山家誠一)

朝日新聞
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