殺処分問題を考え、猫カフェも取材し発表 大阪府立福井高校

選んだテーマについて発表する生徒たち。6月から準備をしてきた=いずれも大阪府立福井高校(茨木市)
選んだテーマについて発表する生徒たち。6月から準備をしてきた=いずれも大阪府立福井高校(茨木市)

 プロジェクターでスクリーンに映し出されるグラフ。全国で1年間に殺処分される犬や猫の数だ。上田樹吏さん(1年)は同級生の視線に気恥ずかしそうにしながらも、「殺されないためには、どうしたらいいでしょうか」と問いかけた。

 11月中旬の発表会。「多文化共生」や「男らしさ女らしさ」など12テーマの中から「動物の殺処分」を選んだ上田さんら4人のグループが、6月から準備をしてきた。インターネットや文献で情報を集め、保健所から猫を引き取っているという京都の「猫カフェ」に取材に行った。一方、発表会での伝え方についてもメンバーで話し合った。語りかける口調は、聞き手にも考えてもらうため。プロジェクターで映すデータを印象づけるため、「殺」の文字は赤で表示することにした。

「安楽死にはほど遠く、死に至る前に焼却されている実態もある」と紹介。ペットが捨てられる理由を説明すると、クラスメートからは「(捨てた飼い主は)ひどい」と声があがった。

 発表を終えた上田さんは「猫カフェで話を聞き、実際に殺処分を減らすために行動している人たちの思いを知ることができた」。元々は「人見知り」だと言うが、「取材するうちに平気になってきました」と笑顔を浮かべた。

 進路について考えを深める同校の通称「ドリカム」授業。「夢はかなう」という意味の英語が名前の由来だ。「気づき」や「主体性」を大切にし、「生きる力」を高め、コミュニケーション能力を磨くのが狙いで、1997年に1、2年生向けの授業として始まった。2015年度に総合学科に改編したのを機に3年間通じて取り組むようになった。「産業社会と人間」「総合的な学習の時間」「課題研究」の授業をまとめて「ドリカム」授業と呼ぶ。

 1年生はまず、人に伝えるトレーニング。立体図形が配置された絵を、見ていない人にどう伝えるか。「月に行く場合に必要なものは?」などのテーマでの議論や発表を繰り返す。2年生は、著名人の半生をまとめたテレビ番組を見たり、社会人や大学生の体験談を聞いたりしながら、「自分の軸=大切にしたいこと、譲れないもの」を見つけるのが目標。3年生になると、社会問題や日常の疑問などから自分でテーマを決め、調べを進める。社会人へのインタビューを経て、1人でリポートを完成させ、プレゼンする。

 ドリカム授業を担当する小川隆史指導教諭(58)は「表現力を磨きながら、自分のこだわりや譲れないものを探す。この先、どんな人生を歩んでいても、自分がどんな人間なのかを良く理解できていれば、それに基づいた正しい選択ができる。きっと幸せを築いていけるはず」と話す。

(吉川喬)

朝日新聞
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