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太田匡彦・AERA|更新|2008/12/08

殺処分ゼロ、熊本の挑戦 殺さない方法はきっとある②

●心ある業者の取り組み

 民間企業も、殺処分を少しでも減らそうと動き出した。


 2008年10月、埼玉県越谷市にオープンした日本最大級のショッピングセンター「イオンレイクタウン」。この1階に入るペットショップ「ペコス」の中ほど、子犬たちが展示販売されているその隣に、「ライフハウス」と名付けられた一角がある。常設の里親募集コーナーだ。


 ペコスを経営するペット用品販売大手「ペットシティ」の豆鞘亮二社長はいう。


「飼い犬が増えれば私たちのビジネスも成長する。でも結果的に、飼育放棄され、センターで殺される犬を作り出している側面もある。ペットビジネスに携わる者として、果たすべき責任があると思います。救える命ならば一匹でも助けたい。そんな思いで始めました」


 埼玉県動物指導センターの協力で、社員が収容犬を引き出しに行く。センターでも独自に里親を探しているが、もらい手が見つけにくい雑種の成犬で、殺処分目前になってしまった犬を中心に引き受ける。


 引き取った犬は、動物病院で健康チェックをし、トリミングサロンで洗い、しつけ教室のトレーナーが飼い犬として必要最低限のしつけをする。いずれもペコスにテナントとして入っている業者が協力してくれる。エサもテナントの生体販売業者が無償で提供し、朝晩の散歩はペコスの店員が担当する。

 

●犬と里親の相性も考慮

 最初に引き出してきた3匹は10月末までに里親が見つかった。それぞれ複数の家族が引き取りを希望したが、家族構成や飼育条件などを吟味し、その犬にとって最も相性が良さそうな里親を選んだ。藤崎恵弥店長はいう。


「一度捨てられたワンちゃんなので、もう二度とそういうことがないよう、それなりに里親の方は選ばせていただきます」


 いまは新たに3匹が、里親を待っている。このペースでいけば、年間30~40匹の里親を探せそうだという。


 ペットシティによる里親募集は既に北海道の店舗でも行われており、ゆくゆくは全国の約80店でも同様の取り組みを始める計画だ。また殺処分ゼロを目指してきた熊本市のノウハウを取り入れようと、山口県下関市は今年5月、熊本市から動物愛護センターの職員1人を派遣してもらった。


 不幸な犬を1匹でも減らそうという取り組みは、ゆっくりとだが広がり始めている。

 

「熊本方式」を参考に犬たちのための動物愛護行政をすすめる山口県下関市。施設は常に清潔に保たれ、犬たちが自由に運動できるサークルも設けられている
「熊本方式」を参考に犬たちのための動物愛護行政をすすめる山口県下関市。施設は常に清潔に保たれ、犬たちが自由に運動できるサークルも設けられている
(AERA 2008年12月8日号掲載)
太田匡彦

太田匡彦(おおた・まさひこ)

1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者やメディアラボ主査を経て、文化くらし報道部記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)などがある。


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