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朝日新聞・朝日新聞デジタル|更新|2017/05/24

飼い主と犬には「親子のような絆」 愛情ホルモンの最新研究で証明

我が子のような愛犬
我が子のような愛犬

 これまで飼い主は犬の「リーダー」にたとえられることが多かったが、ほかの動物との間にはない特別な関係が築けていることがわかってきた。一部の研究者は「親子のような絆」という。最新の研究から見えてきた人間と犬との関係とは――。


 愛犬と目があったら幸せな気持ちになる――。実はこの感覚、飼い主の勘違いではない。


 麻布大(相模原市)の2015年の研究で、飼い主と犬が目線をあわせると双方で、愛情や信頼に影響するホルモン「オキシトシン」の濃度が上昇することがわかった。飼い主と犬30組で尿中のオキシトシンの濃度を調べた。


 人間の母親と子どもの間ではオキシトシンをお互いに高め合う関係性があることがわかっているが、異なる動物間で同じような関係がわかったのは初めて。例えばオオカミは飼いならされていても飼い主と目をあわせず、オキシトシン濃度の上昇は双方起きない。

 

人と犬の特別な関係
人と犬の特別な関係

 人と犬の間には親子に近い、特別な関係が存在することを証明するような研究成果はほかにもある。


 ドイツのマックス・プランク研究所の02年の研究では、複数のカップのうちエサの入っているカップを人間が指さしたり見つめたりすると、犬はその中にエサが入っていることを理解できることがわかっている。


 指さしや目線の意味を理解する能力は、人間の場合では生後8カ月ごろから見られる。この研究によると、チンパンジーですら、この能力はもっていない。


 またハンガリー科学アカデミーの1998年の研究では、不安をかきたてられる新しい環境に犬が置かれたとき、飼い主を「安全基地」として頼る行動をすることもわかっている。同様の環境に置かれた人間の幼児が母親に示すのと類似した行動という。


 麻布大獣医学部の菊水健史教授(動物行動学)は「犬との関係は、親子のような絆にまでなる。犬の飼い主はこのことを知った上で、犬との接し方を考えてほしい」と話す。

 

 

■震災後に別れ、強いストレス

 東日本大震災の被災地で保護された犬たちの研究からも、人と犬との特別なつながりがわかった。東日本大震災直後に福島県内で保護された犬17匹、神奈川県内の保健所に保護されていた犬8匹を麻布大で引き取り、尿に含まれる「コルチゾール」の濃度を比較した結果、福島の犬は神奈川の犬に比べて5~10倍も値が高かった。


 コルチゾールはストレスを感じると分泌されるホルモン。例えば同じ犬でみると、不妊・去勢手術の前と後とでは2倍程度の差が出る。それを大きく超える数値に、菊水教授は「どれほどストレスをかければここまで高い値が出るのかわからない」という。


 麻布大では両県の犬を引き取った後、同じ環境で同じ期間、心身の回復をはかってきた。数値の差には、犬が飼い主と離れる前にどういう関係性を築いていたかが影響したようだ。


 神奈川の犬は飼い主が飼育放棄したもので、そもそも飼い主との適切な関係が築かれていなかった。一方、福島の犬は飼い主がやむなく手放しており、震災によって急に関係が断ち切られてしまっていた。分離のストレスがより大きかったとみられる。


(太田匡彦)


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