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人の言葉を話さない存在 だからこそ築ける濃い関係

sippo・sippo|更新|2016/01/25

前田敦子&リビアン 犬童一心&グーグー
人の言葉を話さない存在 だからこそ築ける濃い関係

ソロシングル「君は僕だ」のMV撮影以来、監督と女優として深い信頼関係を築いている2人。
実は、大の愛猫家という共通点がある。
猫という不思議な存在の魅力を、時の経つのも忘れて語り合った。

文/太田匡彦 撮影/植田真紗美



前田 今日は仕事場におじゃまさせていただきありがとうございます。撮影にはグーグーが協力してくれましたが、最初に迎えた子はチャッピーなんですよね。

犬童 チャッピーは映画「メゾン・ド・ヒミコ」の撮影現場で拾ったんだよね。そのときにはもう「グーグーだって猫である」という映画を撮ることが決まっていた。映画に出てくるグーグーの息子が、いまうちにいるグーグーです。

前田 私は4年前に一人暮らしを始めて、猫を飼うようになりました。最初に来た子がルヴ、その後にポッツとロジャーが加わった。いまはルヴは実家に行っていて、最近になってナターシャという子が来ました。3匹と生活しています。

母が犬派で、実家にはずっと犬がいました。私が猫を飼い始めたら母もはまり、今日連れてきたリビアンは母の猫なんです。社交的で人見知りしない子です。

犬童 猫を飼い始めてはじめて、動物はすごくいろんなことを考えていることに気づいた。

前田 その感覚、なんとなくわかります。動物はそれぞれに個性がありますよね。子どものころ飼っていたハムスターにも感情があって、名前を呼ぶと振り向いてました。

犬童 グーグーは茫洋としていて引っ込み思案で、すごく猫っぽい。でもチャッピーは人間に近い感じがする猫で、いろんなことを訴えてくる。チャッピーが鳴いているから見に行くと、「ここの戸を開けてくれ」って主張しているんです。グーグーは開かない戸の前で、ただじっとしている。


前田敦子さんヘアメーク/<br>
天野優紀(jiji by WORTH WHILE)
前田敦子さんヘアメーク/
天野優紀(jiji by WORTH WHILE)

実は猫は寂しがり屋
早く帰りたくなる

前田 猫同士でも本当に性格が違います。ロジャーは束縛がすごい。私は「彼のもの」になっていて、ほかの猫が私に近づこうとすると、いじめるんですよ。ロジャーだけがお布団の中に入ってきて一緒に寝ているし、私がお風呂に入ると自分でドアを開けて入ってきて、湯船につかってる私を見てるんです(笑)。

犬童 小さいのに強いんだ。ほかの2匹はどう?

前田 ロジャーを「親分」だと思っています。でもロジャーの姿が見えない時は、2匹とも甘えてくる。すごく警戒しながら「あいつ、いない?」みたいに、隙を狙って近づいてくる。それがまたかわいい!

犬童 人間ぽい性格なのかね、ロジャーは。

前田 人間と同じ目線で物事を見ていると思う時があります。でも、私が帰宅すると、みんな玄関にいるのは同じ(笑)。

犬童 うちも、2匹とも必ず玄関にいる。猫を飼うまで猫はツンとして、人間と距離を置いていて、あんまり寂しがらないというイメージがあったけど……。

前田 ぜんぜん違います。寂しがる。私が家に帰るのをかなり前に気づいていて、玄関に近づくと、ドア越しに「ニャー」っていう鳴き声が聞こえてきます。

犬童 それで家に入ると、玄関のところから足にまとわりついてきて。本当に寂しがり屋。だから、あまり長く家を空けると、かわいそうだなと思っちゃう。

前田 私も仕事をしていても気になって、早く帰りたくなっちゃいます。

犬童 猫がいなくても早く帰りたいけどね(笑)。前田さんのところは最年長のルヴで4歳だから、まだ若い。うちはチャッピーがもう11歳で、「長生きしてほしい」って毎日、思っている。チャッピーが熟睡して動かないでいたりすると、「あれ?」と思って呼吸を確認する時もある。

前田 「あと何年くらい一緒にいられるんだろう」って考えちゃいますよね。実家で、ハムスターや犬も看取ってきたのでわかります。うちの子たちも健康管理には気を使っていて、肥満にならないようにご飯の量を調整したり、猫がよく水を飲む器を使ったりしています。猫はしっかりお水を飲ませてあげることが、大事なんですよね。

犬童 野良猫は寿命が短くて平均3、4歳くらいと言われている。様々な原因があるのだろうけど、やっぱり食べ物、飲み物に人間が気を使わないといけないというのはある。「野良猫への餌やりを禁止すべき」という議論が最近あるけど、きちんと地域猫として面倒を見ている人たちの活動は、僕は意義があると思う。

前田 外にいる猫には感染症が脅威だというのも聞きました。それに、保健所に収容されると猫の場合、殺処分までの日数がすごく短いんですよね。以前、関西にあるシェルターを母と見に行って、いろんなことを考えさせられました。

犬童 最近、「犬に名前をつける日」というセミドキュメンタリー映画が公開された。犬や猫を救おうとする女性たちが出てくるけど、あれだけちゃんと撮っているのはすごい。映画「犬と猫と人間と2」もおすすめ。普通の人たちが、人生を捧げるような情熱を持って動物たちを救おうとしていく行動力に驚かされる。

前田 見てみます! シェルターに行って、すべての子たちを飼ってあげられればいいのにと思ったのですが、現実的には自分には無理です。でも私もいつか、捨てられてしまった犬や猫を救える仕組みづくりにかかわりたい。そういうことをされている女優さんが、何人かいらっしゃるんです。

犬童 人間が責任を持って面倒を見ないといけない命がある。「グーグーだって猫である」を撮っている時も、猫と人間の関係をもとに話を作っていくと、本当にいろんなことを考えさせられた。そして、猫と暮らしていると、なぜかほかの動物のことも考え始める。家のなかに動物が1匹でもいるだけで、人間のほうが異質だとすごくわかる。


本気で猫に怒るのは
関係が濃密だから

前田 私の場合、実家には人間よりも動物のほうが多いから、なおさらそういうことを感じます。

犬童 人間と同じ言葉を話さないから相手の気持ちや考えを想像しようとして、より濃い関係が築ける。

前田 私は動物としゃべれると思っていますけど(笑)。普通に「そうだよね」とか「おいで、ご飯だよ」みたいにしゃべりながら生活しています。それで、通じているみたい。

犬童 猫に怒る?

前田 怒りますね。最近も、洗剤を猫が落とした時は本気で怒りました。洗剤を置きっ放しにしてる私がいけないんだけど……。

犬童 うちでは奥さんは怒るけど、僕は怒らない。

前田 私は猫と同じ目線になって、本気で怒ります。「誰が悪いの? ポッツよね」とか怒ると、「ニャーン」って反省します(笑)。でも猫って、まずいことした時には「ヤバい」ってわかってますよね。「はっ!」て表情をしている。

犬童 僕はやっぱり、どこかで「お前は猫だから」と甘やかしているのかな。ズボンに穴を開けられても、その穴がいとおしくなる。打ち合わせ中につまらなくなってきたら、ズボンの穴を見て猫のことを思い出している。前田さんのほうが、猫と対等に生きてるんじゃないかな。猫のことを本気で怒れるのは、それだけ関係が深いのだと思う。

前田 子猫のころから飼っていると、人間の言葉をだんだん覚えていくのがわかります。ナターシャは最近来たばかりでほとんど通じませんが、そのうち私が言っている言葉にうなずくようになると思う(笑)。

犬童 「今日さあ、演出の岩松了がさあ、こんなこと言うんだよ」とか、猫に言うの?

前田 そういう話はしないです(笑)。でもお仕事を終えて家に帰ってくると、やっぱり猫がいて良かったと思います。猫たちがいることで、家では解放された気分になれます。「ニャー」というお出迎えと、ぬくもりがある暮らしは本当に大切。最近、ロジャーがいきなりマッサージしてくれるようになりましたし(笑)。なぜか立った姿勢のまま、フミフミをしてくるようになりました。

犬童 いいなあ。チャッピーはもともとフミフミをしなくて、グーグーは奥さんだけにやる。グーグーは昔はよく僕の頭をなめてくれたんだけど。それでずいぶん毛がなくなった(笑)


(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年1月発行)掲載)



前田敦子(まえだ・あつこ)


1991年、千葉県生まれ。女優、歌手。主な出演映画に「さよなら歌舞伎町」「イニシエーション・ラブ」など。今春公開の映画「モヒカン故郷に帰る」に出演


犬童一心(いぬどう・いっしん)


1960年、東京生まれ。映画監督。79年、高校時代に撮った「気分を変えて?」がぴあフィルムフェスティバルに入賞。主な監督作品に「金魚の一生」「二人が喋ってる。」「金髪の草原」「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」「グーグーだって猫である」「のぼうの城」などがある。


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