「襟巻き」の仲間を威嚇 エリザベスカラーは猫を変える?

エリザベス女王にならうモモ
エリザベス女王にならうモモ

 ペットを飼っている人にとっては、おなじみの「エリザベスカラー」。

 

 犬や猫の首に装着して、怪我をしたときや、手術後に傷痕を舐めないようにさせるものです。

 

 名前の由来は16世紀後半、イギリスの女王・エリザベス1世時代に流行した襟巻きから、とのこと。…当時のセンスはすごい。

 

 我が家の2匹の猫にも、その「襟巻き」を使ったことがありました。

 

 うちに来て2か月ほど経って、去勢手術をしたときのことです。

 

 まだ生後半年ほどの子猫に手術をさせるのも心苦しかったのですが、去勢をしなければオスであれメスであれ、野良でなくても、繁殖期は大変だと聞くし、高齢になってからの病気のリスクもあるとのこと。多くの猫が通らなければならない道です。

 

 近所の病院へ2匹一緒に預け、獣医師の指示のもと、手術の後、一晩入院させました。翌日、2匹を迎えに行くと、お腹の小さな傷にガーゼを当てて、首にはプラスチック製のエリザベスカラーという痛々しい姿でした。

 

 手術後なので、家に帰っても2匹の様子がいつもと違うのは当然かもしれませんが、かなりエリザベスカラーが影響しているようにも見えました。

 

 手術前の2匹は、子猫だったこともあり、家の中で追いかけっこをしたり、身体を舐め合ったり、くっついて寝たり、いつも一緒にいました。ところが、手術後は、2匹の間に距離が生まれていました。

 

 ビビり番長のサバトラ猫・モモは、元々静かな性格なので、割と落ち着いているように見えましたが、活発で人懐っこいあんずは、かなり心が乱れているようでした。

 

 モモはいつもの調子でエリザベスカラーをつけたまま、あんずにそっと近づきまずが、あんずは「ウー!」と威嚇して逃げてしまうのです。

 

 モモが近寄るのをあんずが嫌がるのは、病院の臭いがするからかもしれませんが、それより「エリザベスカラーをつけているこの生き物は何!? 怖い! こっちに来ないで!」と思っているようにも見えました。

 

 なぜなら、周囲が見えにくいせいでフラフラとモモが歩いているとき、固いエリザベスカラーがちょっとでもあんずに当たろうものなら、「フー!」とすごい剣幕で怒るのです。

 

 あんずは「青い襟巻の変な猫」が同じ部屋にいる状況にストレスを感じて、自分の身体を舐めて心を落ち着けようとしますが、自分もエリザベスカラーをつけているから舐められない……そんなストレスの悪循環で、おかしくなった? と思うほど、イライラしている様子。無意味にダッシュしたり、ワーワー騒いだり、あまりごはんを食べなかったり……。

 

 一方、モモは割と平静。自分の身体を舐められない、あんずにも近づけない辛い状況を、ただ静かに受け入れているようにも見えました。

 

 元々が不幸な生まれ(植え込みで独りぼっちだった)だから、不幸慣れしているんだろうか……。それとも、ストレスを表に出せない性格なのか。いずれにしても、なんだか不憫。

 

 3~4日ほどして、エリザベスカラーを外せることになりました。

 

 あんずは手術の傷よりも、エリザベスカラーのストレスで弱ってしまいましたが、外した途端、元気あり余る性格に戻っていました。

 

 モモはいつも通りだったけれど、2匹一緒に仲良く眠るようになり、我が家に再び平和が訪れたのでした。

 

 エリザベスカラーって、つけている猫にとっても、一緒にいる猫にとっても、相当なストレスなのだと感じましたが、かといって、傷を舐めないようにするためにはどうすればいいのか……この後も考えなければならない出来事があったのでした。

 

(ヤスダユキ)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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この連載について
猫アレルギーですけど
普通の家で飼われている猫「あんず」と「モモ」。飼い主の主婦が、2匹との生活や発見をユニークな視点で切り取る人気連載です。
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